第63章 【強制送迎宣言あるいは混沌】
という訳でおかしな事になった。縁下美沙はその義兄及び烏野一行の所へ戻れる目処(めど)がたった。しかし及川徹以下青葉城西の連中もぞろぞろ付いてきたのである。
「おめーらぞろぞろついてくんな、悪目立ちすんだろが。しかもほれ、烏野6番の妹も固まってるぞ。」
気を遣った岩泉が野郎共に言ってくれるが当の野郎共が聞かない。
「いーじゃねーか、どうせ待ってても暇だし。」
まず言ったのは花巻である。
「それにこっちもバラバラになるとめんどくさいし。」
松川がまともに聞こえる事を言うが何となく顔が笑っている。
「あとその、みんなで居た方が安心でしょうし。」
金田一は何故か顔を赤らめ、国見がというか、と続ける。
「恥ずかしい不倫の人が俺らの目の届かないとこで何するか心配で。」
「ちょっと国見ちゃん、いー加減にしてよねっ。」
「私からも突っ込みたい、何で不倫とかなんとか訳のわからん話になっとんの。私らは兄妹やし及川さんはお友達やし。」
「指輪つけててよく言うよ、どうせあんたの趣味じゃないだろつけられたんだろ。」
「ふぎゃああっ。」
更には矢巾も言う。
「そうだ、いい機会だからお兄さんに京谷が妹さんのお世話になってますって挨拶しとこう。」
「てめ、意味わかんねーんだよ。」
「京谷お前な、何気にあの子のハンネ覚えてしかも何気に関わっといてよく言えるな。」
「ちょお待って矢巾さん、何の話ですのん。」
聞き捨てならない会話に美沙は反応し、矢巾はしれっと言った。
「こいつ君のハンネ覚えちゃってさ、話をする時は必ずままコ。」
美沙はこれで何度目かのふぎゃああっである。思わず京谷を振り返った。
「えとあの京谷さん。」
「お前ら苗字長くて覚えらんねーんだよ。」
「なが」
長いやろかと美沙は言いかけて確かにエンノシタという読みは長いかもしれないと思い直す。平仮名か片仮名で五文字な上にローマ字にすると最大で9文字だ。実際美沙本人も筆記体で手書きする時は難儀していた。
「ままコじゃ嫌なのかよ。」
「いやええんですけど、私京谷さんにハンネ言うた覚えないから。で、そーなると出どころは。」
呟く美沙に矢巾がニヤリとした。