第63章 【強制送迎宣言あるいは混沌】
「前は俺がスマホ取り上げて縁下君と話したもんね。」
「このボケ川っ、一体俺の見てねーとこで何やってたんだっ。」
「しつれーな、そん時だって縁下君が美沙ちゃんの居所気にして心配してたから代わりに話してあげただけだよ。ウシワカちゃんが固まってたけどね。」
「ウシワカ相手に恥さらすなっつーのっ。」
「すんませんすんませんっ、たびたびややこしいことになって。」
パニック気味の美沙に岩泉はふぅとため息をついた。
「お前はいちいち気にすんな、身がもたねえぞ。ただでさえ色々あんだろに。」
「お気遣いありがとうございます。」
「ほれ、行くぞ。」
「はい。」
「そうそう、早く行かないと縁下君がまた電話してきかねないもんね。あ、そーだ。」
「ふぎゃああっ。」
「おめえはほいほい女の手を握るなっ気色わりいっ。」
岩泉に怒鳴られて及川はちぇー、と不満そうに呟き握った美沙の手を離す。
「でもはぐれたら俺ら縁下君に殺されちゃうじゃん。」
「せやけどあのいくらなんでも」
「今日はいつものスマホケース下げてないんだよね、どうしようかな。」
「いやいやおかしい、何でどっか掴もうとするんかわからん件。とりあえず袂(たもと)掴もうとせんといてっ。岩泉さん、何とか言うたってください。」
「おめえはこっちこい、そんでキモ川は保護にかこつけて触ろうとすんなボゲ。」
「何で美沙ちゃん絡むと俺いつもこーなんの。」
「自業自得では。」
国見に言われて及川はショボーンとなるがすぐ復活した。
「いいもんねだ、どうせ動画サイトで美沙ちゃんの動きチェックしてるもんね。」
「ストーカーかっ、おめーはっ。」
「何言ってんの岩ちゃん、俺はハンドルネームままコちゃんのファンだよ。」
ここに来て美沙はあーっと叫んだ。随分前のことを思い出す。(詳細は第一部 第35章を参照のこと)
「もしかしてだいぶ前に私を投稿者ブックマークした物好きて。」
「ぴんぽん、俺ー。因みに新作見たよ、編集の腕上がったんじゃない。演出が凄く良かった。」
「あ、う、ありがとうございます。」
3人がそんなやりとりをしている間、
「及川さんが動画の演出について語ってる。」
金田一がボソリと呟き
「こないだの絵に引き続きすっげー違和感があるな。」
矢巾が締めた。