第59章 【強制連行宣言】
「出不精と遠慮で嫌だって言うのが予想されるけど無視する。」
「嫌がるんならやめた方がいいんじゃないのか。」
成田がもっともな事を言うが力はいや、と答える。
「あいつを一人で置いときたくないんだよな。」
よくわからないと排球部の多くが首を傾げる中で木下があー、と声を上げた。
「わかったぞ、一人でオンライン生配信とかして知らねー奴に通話誘われたりリアルで及川さん辺りから誘われたりすんのが嫌なんだろ。」
「木下うるさい、具体的に挙げなくていい。」
当たってんのかよと排球部の野郎共が見事なまでに内心で同時突っ込みをする。
「いやあの縁下、前者は確かに危ないと思うけどさささ。」
東峰があわわとした様子で言い菅原もてかさーと口を挟む。
「こないだの階段の件でも思ったけど及川はまだウロウロしてんの。よくまあ飽きないなー。」
更には澤村までもが後頭部をかきながら言った。
「縁下が怒ってる事考えると飽きないというより懲りないが正確だな、大丈夫なのか。」
残念ながら大丈夫ではない。澤村は当然知らないが及川はハンドルネームままコのファンを自称して明らかに好き勝手縁下美沙に絡んでは岩泉にどつかれる、を繰り返しているからだ。
「まあそんな訳なので連れてきます。」
「おっしゃ、じゃー決まりだぜっ。」
西谷が言って一応事は決まった。
その日の夜の事である。
「言うだけ、無駄や、思いつつ、言わせて、もらいたいんやけど。」
美沙が途切れがちに言った。
「ダメ。」
「いや、言う。うぎぎ。」
「ほらもっと頑張って。」
「あかん、無理、起き上がられへんー。」
「いい子だからやってごらん。」
一体この義兄妹は何をやっているのかというといつか力が実施すると言っていた腹筋である。主に義妹の美沙が力に足を押さえてもらって奮闘している形だ。
「何で、また、私強制参加なん。」
「お前すぐ遠慮するから。」
「うそ、やー。」
美沙は唸る。
「仮にも兄を疑うのかい。」
「だって、」
頑張って起き上がってみた美沙が言った。