第57章 【外伝 副主将の独り言】
「今まで何も考えてへんかったんですけど、つい最近ちょっと。」
「へえ、詳しく。」
「嫌やっ。」
「縁下絡みだろどーせ。」
「ふぎゃああああっ。」
慌てふためく美沙が面白すぎたが話が逸れている。
「で、話戻してそれとこれとは別じゃないの。」
「どうなんでしょう。」
「例えばさ縁下絡みで美沙ちゃんが嫉妬してさ、でも相手にどうこうするつもりある。」
「まさかと言いたいんですけどよう考えたら兄さんが絡んだ場合私は自分で自分が保証でけへんくて。何度か兄さんとか成田先輩らの事馬鹿にされてブチ切れた前科持ちやし。」
果たしてどうかなあと菅原は思う。話が違う気がした。直接馬鹿にされたとか何とかは余裕で想像がつくが美沙が直接何かした訳ではない相手に何やかんやと言う所は全く想像できない。とにもかくにも
「考えすぎ。」
菅原は呟いた。美沙がえ、とかすかに言ってこちらを見る。
「俺も人の事言えないけどさ、美沙ちゃんのは極端。」
「なんという。」
「うまく言えないけどその、美沙ちゃんの場合は潔癖すぎっていうか、配慮はいいけど自分も人の事言えないなら何も言っちゃいけないなんて流石に思い込みが過ぎんじゃない。」
「お気遣いありがとうございます。」
「こら、話終わってないぞ。何か言いたい事があるなら先に言えよ。」
菅原は責めたつもりはなく笑いながら言ったが縁下美沙は結構真面目に考えている様子を見せてから言った。
「私、自分が人にようそんな事言えるなこの人て思うタチやから出来れば他所様にも同じ事はしとないなぁって思てまうんですよね。」
そう来たかと菅原は思った。
「これまたどこまで出来てるんか怪しいんですけど。」
「自分に完璧を求めすぎ。」
菅原は苦笑、美沙もその義兄を思い起こさせる困ったような笑顔を浮かべてしばし2人は黙って廊下を歩いた。
「菅原先輩、」
先に沈黙を破ったのは美沙だった。
「大丈夫です。私は確かに自分の事は融通きくからてつい後回しにするとこがあってそれがアカンのやと思います。せやけど私はだからって自分の存在そのものを全部ほる(捨てる)つもりはないんで。」