第55章 【お兄ちゃん】
当の縁下美沙は家に帰ってから買ってもらったハミチキを思い切り笑顔で食していた。力に歩きながら食べるのは禁止されていたのである。兄妹は食堂で2人して座っている。義母は席を外しており、義兄の力はテーブルに突っ伏し、しかしその片腕は母の目を盗んで義妹を愛でていた。
「何でそないになでなでするん。」
ハミチキをもぎゅもぎゅしながら美沙は尋ねた。力はんー、と言って
「可愛いから。」
「食べとるだけやのに。」
「心底嬉しそうだから見てて何かいいなって。」
「そお。」
何も考えていない美沙は首を傾げるが義兄のなでなでが続くうちに何だか顔が熱くなってくる。
「どうした、美沙。」
「な、何もないもん。」
「ツンデレはいつもの事だけどもうちょいデレてもいいんだよ。」
「まままままた何を阿呆な。」
美沙は顔を真っ赤にしてそっぽを向きながらハミチキの残りをかじる。しばし兄妹は沈黙した。
「お兄ちゃん、」
美沙はポソっと呟いた。
「大好き。」
力がガタッと体を起こした。次の瞬間、いつ義母が通りかがるかわからないようなこの場で美沙は力に抱きしめられていた。
「もっぺん言って。」
「きょ、今日はもうアカン。」
「頼むよ。」
「及川さんみたいな事言うてるで。」
「一緒にされたかないけど俺は言う権利あるだろ。」
「ふぎゃああ。」
かくして縁下力にとっての義妹の萌えポイントが増えたのであった。
次章に続く