第54章 【義妹復活する】
「てめっ笑うんじゃねーっ、人が心配したってのにっ。」
「うん、それは何とのう(何となく)わかったで、ありがと。せやけどあんた言い方、恥ずかしがりかっ。」
「うっせえっ。」
影山が顔を真っ赤にして怒鳴り、日向は堪え切れなくなったのか腹を抱えて大笑いし、谷地も口元を押さえてはいるが明らかに笑いが止まっていない。
「何か5組がうるさいと思ったら」
ここで横から声が入った。
「やっぱりままコさんなの。」
「あ、月島君。」
谷地がまだ笑いが残っている声で言い、月島はジロリと美沙以下四人を見つめる。
「せっかく静かだったのにさ、あーあ。」
「山口、通訳。」
正面から捉(とら)えると日向や影山も巻き込んで喧嘩になりそうと判断した美沙は素早く一緒にいた山口に振る。
「ツッキーは何だかんだ言って心配してたんだよ。」
クスリと笑って山口は言う。
「山口うるさい。」
「ごめん、ツッキー。」
「別にあんたの為じゃないからあんたが具合悪いと縁下さんが動揺して困るだけだからそれくらいはわかるよね、ままコさん。」
「えーあーうん。」
美沙は困ったように笑う。本人は気がついていないがその笑い方は義兄の力に似ていた。が、こうなるとやはり単細胞組が反応する。
「月島ー、やっぱり美沙にきつくね。」
日向が言い、
「ホントにお前ままコの事嫌いじゃねーのか。」
影山が訝(いぶか)しげに言いだした。
「何回同じ事言わせんの君らは、別に嫌ってるとかじゃないから。」
「せやろな。」
聞いていた美沙は正直に言った。途端に日向と影山がびっくりした目を向ける。
「ホンマに嫌いやったらハンネとは言えわざわざ私の事呼ばへんやんな。」
そうやろ月島、と美沙は微笑んで影山も上回るでかい同級生に目を合わせ、当の月島は引きつった顔をした。
「この半分ボケ。」
「今更やん。」
しばらくはたで聞いていた山口がまたクスクスと笑う。
「あ、そうだ美沙さん。」
「どないしたん、山口。」
「縁下さんが言ってたよ、美沙さん治ったら一緒に運動するって。」
「は、へ、ちょお待ってどゆこと。」
美沙は思わず谷地の方を振り返る。