第54章 【義妹復活する】
子音がぶっ飛んだ返事をして美沙は部屋に戻り大人しく義兄を待つ事になった。
義兄の力はしばらくして美沙の部屋にやってきた。来た途端に両腕を広げる。無言のおいでに応えて美沙は即刻その腕の中に飛び込んだ。力もしっかり抱きとめて2人はそのまま美沙のベッドの上で黙って抱き合っていた。
「珍しいな、お前が自分からって。」
なかった訳じゃないけどさと付け加えながら力が呟く。
「治ったら抱っこしてもらおって思ててん。」
「俺も」
力は呟き更に美沙を抱く腕に力を込める。
「まずは抱っこからかなって。」
「まずはて次があるん。」
「それは後で。」
「あるんかいっ。」
しかし力は義妹の言葉を聞き流した上に義妹を抱きしめたまま離さない。そのまま例によって兄妹は唇を重ねる。
「兄さん」
美沙は呟く。
「大好き。私ずっと兄さんと一緒にいたい。」
「俺もだよ、美沙。ああそれで思い出した。父さんと母さんも言ってたよ、独立するまでお前を手放すつもりは絶対ないってさ。」
「そーなん。」
「うん、だから安心しな。俺からも今更連れてかれたら困るって言ったけどね。」
美沙はうん、とそのまま流しかけたがちょお待ってと止まる。
「兄さんそれ言うて大丈夫なん。」
言うと義兄は何かごまかすような笑みを浮かべた。
「母さんはともかく父さんには勘付かれてるかも。」
「え。」
「もうしばらくは兄妹でいろって言われた。」
「ちょお兄さんっ。」
「大丈夫だよ、父さん怒ってる感じじゃなかったから。もしかしたらお前引き取った時から可能性考えてたかもな。」
「流石お父さん、なんやろか。」
美沙はあわわとなりながら呟く。
「お前はいつも通りでいいよ。」
「私すぐ顔に出るん知っとる癖に。」
「今更だろ。」
「もー。」
文句を言いながらも美沙はとりあえず抱っこしてもらうのに専念する事にした。なかなかない機会だ、今のうちである。
「これぞ俺得だな。」
スリスリグリグリをしまくる美沙の頭を撫でながら力が呟いた。
「兄さんホンマ適応してもたね。」
「お陰様で。」
そうやって兄妹はいつもより長く強く抱き合っていた。そうすればきっと自分達は離れる事がない、奇(く)しくも兄妹揃ってそう思っていた。