第54章 【義妹復活する】
そうして縁下美沙は木下からの漫画雑誌を読み、谷地からのゼリー飲料を飲み、清水からのキノコキャラのフィギュアを眺めているうちに食欲含めて復活し、ほどなく家庭内面会謝絶も解かれた。朗報である。しばらく義妹の顔をろくに見れずまして触れることすら出来なかった義兄の力としては特に、である。
「美沙さん明日から学校来れそうなんですね。」
部活にて谷地が嬉しそうに言った。
「良かったじゃん、縁下。」
菅原もニッと笑う。
「おかげさまで。」
力は微笑みながらも帰って早いとこ義妹を抱きしめたいと思う。だがソワソワしていたのが外に出ていたのか成田に落ち着けよと言われてしまい月島にもおちょくっているような笑みを向けられた。
ソワソワしていたのは力だけではない。当の美沙だって愛する義兄からしばらく離れざるを得なかった点では同じなのだ。治ったら義兄に抱っこしてもらうと無駄に固く決めていた義妹は復活してやっとこさ伏せっている間は散らかり気味だったところを片付け、明日登校する準備もして義兄が帰ってくるのを心待ちにしていた。
義兄の力はいつも通り遅くに帰ってきた。一階から音が聞こえたのですぐにすっ飛んで行きたいところだが義父母の目につきやすいところで義兄に抱っこしてもらうわけにはいかない。ここはいつも通りにと我慢する。それでも落ち着かなくて美沙は片手にはめている力からもらった指輪をグリグリと弄っていた。
しばらくして力が二階の階段を上がってくる音がした。今やと思った美沙は部屋から飛び出す。
「兄さん、おかえり。」
「ただいま美沙。すっかり良くなったな、よかった。」
飛び出してきた義妹に力が微笑む。しばらく見ていなかったそれに美沙はもうたまらなくなった。
「わっ。」
美沙にがばっと抱きつかれた力が小さく声を上げる。美沙はかまわずそのままスリスリグリグリと頬を擦り付けた。大好き大好き大好きと頭の中がその言葉で埋め尽くされていく。そして力もまた何かを感じたようだった。
「美沙。」
力の片手がそっと頭に置かれるのを感じる。
「ここじゃあれだからもうちょい我慢な。とりあえず着替えて飯にするから。」
「あい。」