第53章 【眠り姫に差し入れを】
"何で他の青城の人が心配するんですか。"
"だってホントにマッキーも金田一もまっつんも、あと矢巾ちゃんと渡っちも心配してたよ。国見ちゃんだって嫁が倒れて旦那がうるさいんじゃないかって言ってたし。みんな美沙ちゃんに興味津々みたい。俺のアイドルなのにさー。"
あかん突っ込みどころがありすぎて頭クラクラしてくるわ、と美沙は思った。とりあえず絵文字でアイドルではない事を表現してみたが伝わるだろうか。しかし本当に頭がクラクラしてきた美沙はスマホを椅子においてまたベッドに潜った。そのまま縁下力にとっての姫はまた眠った。
美沙は知らないが隣の部屋からは義兄の力のこんな声がしていた。
「渡しといたよ、木下。いや正確には隙間から押し込んだ、だけど。笑うなよ仕方ないだろ基本治るまで部屋入るなって言われてるんだから。気休めな気もするけど美沙も落ち着かないだろうしさ。そうかな、普通だと思うけど。誰が倦怠期(けんたいき)だっ変な事言うなっつか声上げさせないでくれよ美沙部屋隣だから起きたらどーすんだよ。ああ治ったらきっともらったやつ読んで後で礼を言いに突撃してくるよ。お礼まわりじゃないうまいこと言ったつもりか勘弁してくれよ木下も成田も最近何なんだよ。」
ひととおりやりとりしたらしき様子、そうして力は最後に言った。
「つくづくみんながうちの美沙を心配してくれて嬉しいよ。」
次章に続く