第53章 【眠り姫に差し入れを】
美沙が起きるともう夜でしかもドアの前に何やら小さな山があった。一番下は雑誌らしきもの、その上は小さなスーパーの袋だ。まだぼやっとしている頭で何やろと思いながらベッドからフラフラ這い出る。
「あ。」
かすれた声でしかしほんの少し微笑みながら美沙は置かれたものを手に取る。まず袋を開けてみた。ゼリー飲料と美沙の好きなキノコキャラのフィギュアが入っている。ゼリー飲料には谷地さん、フィギュアには清水先輩と書かれた付箋が貼ってある。雑誌は週刊の少年漫画雑誌で表紙が美沙の好きなあのバレーボール漫画のだった。木下と書いた付箋が貼ってある。付箋は筆跡からして力が書いたのだろう。まだ完全回復していないせいか美沙は軽くうるっときた。寝巻きの袖で目を拭い雑誌とゼリー飲料は椅子の上に置く。キノコキャラのフィギュアは本棚の空いているところに飾った。回復したら皆にお礼を言いに行こうと思う。ベッドに戻るまでほんの少しだけ気力が残っていた。スマホの着信ランプが点滅しているのに気づきスリープモードから復帰させる。
「リエーフと犬岡君と。あ、及川さんか。」
メッセージアプリからの着信だった。順番に見ていく、まずは灰羽からだ。
"美沙ー生きてるかー"
まだ文字を打つのがきつかったので両腕で丸を作っているキノコキャラのスタンプを送った。次は犬岡だ。
"あれから食えるようになった?俺は食っても食っても腹減るorz"
笑っているキノコキャラのスタンプを送っておいた。最後は及川だ。
"ヤッホー、その後どお?こっちは岩ちゃんも元気だよ。"
"後、他のみんなも心配してるよ 特に狂犬ちゃん"
岩泉にどつかれでもしたのか2回に分けて送られたメッセージに美沙は思わずなんでやねんとまだぼんやりしている脳内で突っ込む。及川と岩泉はともかく何故に他の青城の連中それも特に京谷に心配される流れになるのか。いやそもそも真偽のほどが怪しい。少し考えて美沙はハリセンで突っ込みを入れるキノコキャラのスタンプを送っておいた。
"何でっ"
すぐ返事が来た。さすがにスタンプや絵文字で返すのは無理だったのでおぼつかない指先でフリック入力をする。