第51章 【義妹の悪夢と義兄の動揺】
ご馳走様と言って食器を下げて、さて部屋に引き上げようとした時力は父に呼び止められた。
「何、父さん。」
父はチラと母が近くにいないことを確かめた様子を見せてからこっそりと言った、とりあえず2つ言っておくと。1つは何か感づいているかもしれないが2人共首を突っ込まないように、もう一つは
「う、うん。」
一瞬黙った父に力は不安になったが次の瞬間にはむしろ内心凍りつく羽目になった。父は言った、美沙大好きなのはいいがもうしばらくは兄妹でいろと。
「急に何なの、父さん。」
笑ってみせるもののあまりうまくいっていない気がすると力は思う。
「美沙は俺の妹だろ。」
父もまた微笑んで別に他意はない、お前が今は妹と思っているならそれでいいと言った。
「"今は"って何。」
ためらいがちに問う息子にしかし父は笑って流して去っていく。力はしばし呆然としていた。
「もしかしてバレてる。」
力は小さく呟いた。心臓が飛び出すんじゃないかと思うくらいバクバクしている。ただ救いなのは父の笑い方が威圧しているのではなくむしろしょうがない奴だなぁといった感じだった事だ。もしかしたら父は最初から息子と養い子が線を越える可能性を考えていたのかもしれない。父さん恐るべしと力は身震いした。
次章に続く