第50章 【義妹倒れる】
当の美沙はその後義母と一緒に医者から戻り、処方された薬を飲んで自室のベットで丸くなっていた。熱で頭は朦朧(もうろう)としている。身体中の筋肉が痛い気がする。鼻と喉も痛むし気分は最悪である。そんな状態でこいつは医者に連れられる前、メッセージが既読スルーのままになっていたのを心配した他校の連中からのメッセージやスタンプに返信した。流石のスマホ好きですらしばらく光る液晶画面を見るのも操作するのもしんどい。それでも他から心配してもらえる事なんて今までなかったのだ、何と有難いことか。そう思った美沙は何とか返事をした。フリックによる日本語入力もしんどい状態だったから使用履歴に残っていた絵文字で済ませてしまったが通じただろうか。
医者が終わって切っていたスマホの電源を入れると程なくメッセージアプリがメッセージを受信した。及川も灰羽も犬岡も意味を解したと思われる返事をよこしていた。
及川は"可哀想に、ちゃんとあったかくしてゆっくり休むんだよ。あ、岩ちゃんも心配してたから。"とよこしてきた。
灰羽は頑張れといった感じのテンションが高いスタンプをよこしてきた。
犬岡は"ちゃんと食って元気になれよ!"とよこしてきた。
灰羽と犬岡は孤爪に翻訳してもらったことを知らないままとりあえず感謝しかないと思いつつうまく動かない指を動かして何とかお辞儀をしているスタンプを送った。画面を見ていたのはたいした時間ではなかったのに頭がクラクラした。しばらく画面を見る気分にはなれなかった。
そうして今自室にて充電ケーブルが繋がったままのスマホをサイドテーブル代わりにベッドの側に引き寄せていた椅子に置き美沙は布団をかぶっている。今頃義兄の力達は午前中の授業を受けているだろう。谷地はきっと力から美沙が伏せっていることを聞いているだろうがどう思っただろうか、変に動揺していないと良いのだが。月島あたりは体調管理出来ないってどうなのって思っているかもしれない。いやそれより義兄は大丈夫だろうか、自分に何かあると慌てるからそれはそれで心配だ。ぼんやりと考えているうちに美沙の意識は暗転した。
暗転した美沙の意識は熱された頭の中でグルグルと回り、それは底なしの混沌とした世界を頭の中に作り出した。
次章に続く