第50章 【義妹倒れる】
「それでわかるんですか、及川さん。」
画面に表示された美沙の返信は風邪を引いた絵文字、学校の建物の絵文字、寝ている絵文字の3つのみで構成されている。及川はふふーんと得意げに言った。
「ハンドルネームままコちゃんのファンならこれくらいわかんないとねー。」
「ざけんな、最初は10分以上唸った挙句本人に聞いてたろうが。」
「ちょっと岩ちゃん、シーッ。あーあでも残念だなぁ当分お話出来ないじゃん。早く良くなってほしいから我慢するけどさ。」
ブツブツ言う及川に花巻が呟いた。
「おい松川どう思う、あいつ好きな漫画が長期休載になりましたみたいなノリになってんぞ。」
「実際そんな気分なんじゃない。」
「ままコはやっぱり変だ。」
「そやってハンドルネームだけは覚えたお前もなんなんだよ、京谷。」
「というかまだ人妻追っかけてる及川さんが見てて恥ずかしいです。」
「いや国見、人妻って表現もどーかと思うぞ。」
「何でもいい、あの半分ボケの回復が先か俺がクソ川をどっかに埋めるのが先かだわ。」
岩泉が呟き矢巾がため息をついた。
驚く事に東京は音駒高校の方もまた縁下美沙の話題になっていた。
「犬岡やべえっ、美沙からメッセの返事来ねーんだけどっ。」
「あんだリエーフ、とうとうあの地味リボンに愛想つかされたかぁ。」
「違いますよクロさんっ。多分。」
「あ、リエーフも。俺もなんだ。」
犬岡の話を聞いて灰羽は良かったーと胸をなでおろす。
「別に既読スルーくらい普通にあんだろ、寝落ちしたとかじゃないのか。」
うるさそうに言う夜久に灰羽はいーえっと迫る。夜久からすればどアップうぜえといったところだ。
「美沙は絶対1回は返事しますもんっ。」
「それがわかるくらい仲良いのはいいけどいちいちうるせーわ。」
さしもの夜久もうんざりした顔で呟く。
「もっぺん送ってみよ。」
「俺も俺も。」
「朝から人様の邪魔すんじゃねえ、この馬鹿共っ。」
夜久が怒鳴るが灰羽も犬岡は聞いていない。程なく彼らのスマホが振動した。
「返事きたっ。」
「リエーフ、俺もきたっ。」
「でも何書いてるかわかんねー。」
「俺もっ。」
「お前ら何の話してんだ。」
とうとう漢字も平仮名も読めなくなったのかと心配した夜久が犬岡のスマホを覗き込む。