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【ハイキュー】エンノシタイモウト第二部

第46章 【不穏な電話】


その日の夜、縁下家に突然電話がかかってきた。出たのは母でそのまま話している。激しくはないが慇懃無礼な口調からして穏やかではない。
力が気になって二階からこっそり見下ろしていたら音が聞こえたのか美沙も部屋から出てきて力の隣にくる。

まず兄妹に聞こえたのは、どうしてここの番号が、貴方には伝えていないはず、といった言葉だった。更にポツポツ聞こえたのは今更何ですか、という過去に揉め事があったような言葉だ。盗み聞きをしているという自覚はあったが兄妹は動けなかった。母の言葉は続く。私達は貴方を許していない、貴方はあの子を捨てて他の人のところへ行った、子供も産まれていたのにという言葉が出てくる。相手が何か話しているのか母の言葉はしばし途切れた。力はここで美沙の話だと気づく。美沙も気づいたのか不安そうに力のシャツを掴む。

次に聞こえた母の言葉は兄妹を激しく不安にさせた。美沙を引き取るって、と母は言った。美沙がシャツどころか力の片腕にしがみついた。力も思わずそんな妹を抱き寄せる。電話の相手が誰なのかわからない、ただ美沙の事を知っているのは確かだ。力は祈るような気持ちで思う。誰だか知らないけど今更美沙を取られるなんて冗談じゃない、やっと俺は美沙が可愛いって思えるようになったのに、もうこいつがいなくなったら死ねるとこまでいってるのに、連れて行かないでくれ、母さん、頼むよ。
渡しませんよ、母の言葉が聞こえた。相手が何か言ったのか母はしばし黙る。が、何をおっしゃっても無駄です、と母は言った。更に母は相手にとどめを刺した。美沙は私達の娘ですから、そう言って母は電話を切った。
兄妹は大きく安堵した。美沙の膝が静かに折れた。気が抜けたのだろう。力は慌てて支えてやる。母が電話の受話器を置いたのが見えた。盗み聞きが知れてはまずい。兄妹は慌てて逃げ、とりあえず美沙の部屋に2人して飛び込んだ。
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