第45章 【不意打ち】
戻ったはいいがドキドキして美沙はすぐベッドに入らずにドアに背を預けて天井を見上げていた。義父母には申し訳ないが自分と義兄の力は今すっかり依存しあっていて、力に至っては人目を盗んでは美沙を抱っこしあまつさえ最近は唇を奪うという行為に出ている。しかし義母のは不意打ちだ、元々望んで自分を娘にした人であり母としての行動という理解は出来るがびっくりすることには変わりない。
「もしかして」
美沙は独り言を言った。
「兄さんの抱っこ癖はお母さん似とか。」
いやまさかそんな阿呆なと美沙は1人首をブンブンと横に振り、とりあえず寝ようとベッドに歩み寄る。布団がやや膨らんでいるが気にしない。力からもらったキノコキャラのぬいぐるみを寝かせているせいで布団は日頃から多少膨らんでいる。その為美沙は異変に気づけなかった。
布団からにゅっとごつい腕が伸びてきた。声を上げる暇もなく美沙はその腕にとっ捕まり、ベッドの中に文字通り引きずりこまれる。あっという間のことだった。
「ちょ、兄さん。」
布団の中で美沙はコソコソと囁いた。
「夜中に人のベッドで何やってるんよ。」
「お前が変な時間に起きてたのに気づいて心配になって。」
暗くてよくわからないがおそらく義兄は笑っていると美沙は思う。
「せやからて何もこない怪しげなことせんでも。さっきお母さんちょっと起きてきてはったで、見つかったらどないするんよ。」
「大丈夫だよ、もっぺん寝たら朝まで起きてこないから。」
力は言ってそれ以上何か言わせないかのように自分の唇で美沙の唇を塞ぐ。無茶苦茶な話だがこれは誰にも愚痴れないと美沙は思った。谷地他烏野の連中には勿論のこと、外部、特に及川あたりに知られたらどうなるやらわかったものではない。
「こら、ゴソゴソしない。」
力が言って美沙を抱え直す。
「いやあの兄さん疲れてるやろ、お部屋で寝んと。」
「じゃあお前を部屋に連れて行こうかな。」
流石に義兄は何を言っているのかと思った。一緒に一線を超えた立場で言うのもあれだがそれはやり過ぎだ。本当に義父母に見つかったら自分も義兄もえらいことになる。しかし義兄は美沙を抱っこしたまま断固離さない構えだ。