第44章 【妹貸し出し 後日】
一方、こちらは烏野高校男子排球部である。
「どういう事なんです、縁下さん。」
言っているのは月島だ。
「何が。」
言われた縁下力はしれっと返す。
「とぼけないでください、何でままコさんの装備品が増えてるんです。」
「ツッキーもすっかりハンネ、だっけ、の呼び方に慣れちゃったね。」
「山口うるさい。」
「もしかして指輪の事。」
「ええそうですよ、この休みの間にとうとうやったんですか、お気は確かですか。」
「別に、たまたま300円均一の店見かけて行ったらあいつが好きそうな形のがあったからつい買っただけだよ。学校にまでつけてくるとは思わなかったけど。」
力は言うが勿論月島が納得しないことは想定済みである。
「ただでさえ腕輪つけるわリボン結ぶわ週の大半は一緒に帰らせるわ拘束しまくりだというのに何考えてんです。あいつはあなたに貰ったら無下(むげ)にはしないんでしょうけど。」
「月島、大分うちの美沙の事わかってきたね。」
「ままコさんもどこかの野生児と同じで根が単純なので。それより」
「別に何かあった訳じゃ無いって。気分だよ、気分。」
「縁下さんには珍しいですね。」
山口が不思議そうに言う。
「そんなこともあるよ。」
力はなんでもない風に言ったが内心は冷や汗がダラダラと流れる気分だ。まさか休みに義妹を及川に貸し出して外出させた結果、人の言ったことを盛大に拡大解釈した及川が勝手に義妹を抱っこした事が気に入らずとうとう虫除けになるかな、と儚(はかな)い期待を込めてつい買い与えたなどと言えない。当然与えれば美沙がつけることはわかっていた。完全に故意犯である。そんな力に月島がため息をつく。
「そこまでなさるなら証明してくださいよ、自分達は大丈夫なんだって。」
「ああ、そうするよ。ところで」
力はさっきから背中にバキバキと刺さる視線の方を振り返った。
「成田、木下、何か言いたそうだな。」
「いやもう何て言うか、なぁ。」
木下が呟き成田が後に続く。