第44章 【妹貸し出し 後日】
「行き先のマニアックさはともかく楽しまれたのは別にいいんですけど、」
ここで国見が言った。
「にやけすぎじゃないですか。」
「そりゃあねぇ、触りほーだいだったもん。」
調子に乗った及川はうっかり口を滑らせた。途端に部室の空気が凍る。京谷ですらジトッとした目を及川に向けている。
「おいクソ川、触りほーだいってのは何だ。」
「別にいかがわしいことはしてないよ、お手手繋いだのと抱っこさせてもらったんだ。やっぱり細かったなー、折れちゃうかと思ったよ、お昼結構量食べてたのにどこでエネルギー使ってんだろ。いやそれよりあれだね、あの普段は女の子ちゃいますみたいな顔してる美沙ちゃんが照れてるのが可愛くてさー。」
ベラベラ喋る及川は多くがドン引きして自分を見つめている事にも岩泉がすぐ側で片方の手で握りこぶしを作ってワナワナと震えている事にも気づいていない。しばらく静かになる部室、やがて岩泉が爆発した。
「何やってんだおめえはあああああああああっ。」
「ちょっ岩ちゃんっ、首っ、首ヤバっ。」
「このクソ川っ、あんだけ路上でセクハラすんなっつってんのに人が目を離した隙に何を気持ちわりぃことしてやがんだこのキモ川っ。」
「悪口はどっちかに統一してよっ、しかもキモくないしっ。」
「黙れしゃべんなおめーに選択権も拒否権もねーわとりあえずフられてるのほぼ確実なのに他所の女追っかけ回して挙げ句の果てに何触ってやがるあの妹も妹だ何うかうか触らせてやがんだっ。」
まくしたてる岩泉に矢巾が言う。