第44章 【妹貸し出し 後日】
縁下美沙が及川徹に貸し出され、外出したその休み明けのことである。
「何だ及川、無駄に機嫌いいな。」
青葉城西高校男子バレー部の部室にて花巻が尋ねる。
「んー、ちょっとねー。」
「ほっとけ花巻、こいつ休みに烏野6番の妹とでかけやがったんだ。」
「え、ままコとデートっ。」
「それも気色わりぃことに兄貴にわざわざ許可とってまで。」
「マジかよ、兄貴もよく許したな。」
呆れ半分感心半分で言う花巻、更に1年の国見がうわ、と呟く。
「人妻に手を出したんですか、サイテーですね。」
「人妻って国見、お前っ。」
「だからいつも言ってるだろ金田一、あの兄妹は夫婦同然だって。少なくとも兄貴は大人になったら速攻妹を嫁にするつもりと思う。あり得ないだろうけど最悪妹が嫌がっても無理矢理何か手続きするとかそのまま一緒に住むとかすんじゃないか。」
「何か生々しいぞ、国見。もう勘弁してくれ。」
「とゆーか国見ちゃん、人聞きの悪いこと言わないでよねっ。」
「身から出た錆(さび)だ、このクソ川。」
「岩ちゃんは安定のひどさっ。」
岩泉はケッと呟いてから静かに尋ねる。
「そんなに楽しかったのかよ。」
「面白かったし楽しかったよ。やっぱり美沙ちゃんは見てる世界が全然違うね。まさかこの及川さんが女の子と美術館とかパソコンショップに行くとは思わなかったよ。」
「流石あの嫁、マニアック過ぎ。」
「というか美術館て渋いな。お年寄みたい。」
「でも意外と良かったよ、まっつん。すごく綺麗な日本画のやってたんだ。パッと見日本画に見えなくてさ、美沙ちゃんに教えて貰った時びっくりしちゃった。なんてーかモダンでさ、そんで絵なのに鳥とかが生きてるみたいに見えるんだよね。」
「及川さんが絵を語るなんて違和感バリバリですね。」
矢巾が呟き、渡がよせよとクスクス笑いを抑えきれないまま呟く。
「やっぱり変な女。」
更には京谷までもがコメントする。相当の事態だ。
「そうそう、美沙ちゃん狂犬ちゃんの事ちゃんと覚えてたよ、良かったねー。」
「別に、ままコに覚えてもらわなくてもいい。」
「とか何とか言ってハンドルネーム覚えてんじゃないか。」
矢巾に突っ込まれた京谷はプイッとそっぽを向く。顔が少し赤い。