第43章 【妹貸し出し当日 その4】
力はスペースを入れてまで強調した。
"ちょっとずつ歩き出しといて"
返信が来るまでにコンマ数秒の間があった。
"わかった"
それを確認した力は早速身支度をして両親に美沙を迎えに行ってくると声をかけてから家を出た。力は知らなかったが息子のやや突飛な行動に両親は顔を見合わせていて、父は力が美沙を大事にするのはいいが少し行きすぎてやしないかと呟いていた。
力が家を出てからしばらく、最寄り駅の近くまできた。うまい具合に愛する義妹と及川が向こう側から歩いてきている。
「兄さん。」
美沙が気がついてこちらを見る。力は良かった無事だと安心しながらも美沙の片手が及川に握られていることに気づいて少しムッとする。
「ヤッホー、縁下君。本当に迎えに来たんだ、心配性だね。」
「大事な妹ですから。」
「妹って対外的には、でしょ。」
及川はニヤリとし力は聞かなかったふりをする。その及川は、はい、と握っていた美沙の片手を離して力の方へそっと押しやった。
「ありがとう、凄く楽しかったよ。」
「それは何よりです。」
本当の事を言いながらも力はすぐに美沙の手を取り、そばに引き寄せる。
「ホントは持って帰りたかったけどねー。」
「勘弁してください、3桁の番号にダイヤルしたかありませんから。」
「笑顔が怖いねぇ、おにーちゃん。」
「あ、その前に岩泉さんに報告かな。」
「兄妹揃ってやめてっ。てゆーか岩ちゃんを何だと思ってんの。」
縁下兄妹は揃って、え、と首を傾げる。
「あの、失礼ながら」
「及川さんの」
「躾(しつけ)役だと」
「思(おも)てました。」
「連携プレーしてまで言わなくていーからっ。」
縁下兄妹は最近2人揃うと強い。