第43章 【妹貸し出し当日 その4】
「何見てんの。とうとう俺の魅力に気づいた。」
「冗談はおいといて」
「ひどいっ。」
「何でまたそないに好意的なんかなって。」
「何でも何も俺的には楽しいから。」
「岩泉さんに無駄に前向きとか何とか言われた事は。」
「あるかもしれないからやめてっ。」
美沙は思わずくすくす笑う。
「もー、まさか美沙ちゃんにおちょくられるとは思わなかった。」
「よろしいやないですか、たまには。」
「しょうがないなぁ。」
いい加減にしないとこいつらはリア充爆発しろとはたから言われるかもしれない。
「で、美沙ちゃん機械増やすの。」
「まさか。でも兄さんにちょいと。」
「縁下君に。」
美沙ははい、と呟いてサプライ用品のコーナーに行く。
「マウスパッド。」
「兄さんのがボロボロになっとって。どれにしよかな。」
「おにーちゃんにマウスパッド買う妹、レアな光景だねー。あ、これなんかいいんじゃない。」
「いいですね、他にも見てみよ。これもどないかなぁ。」
「縁下君に合うんじゃない。」
「ほなこれにしよ。」
美沙はとっとと決めてレジへ向かった。
「他に行きたいとこは。」
しばらくのち外を歩きながら及川が尋ねる。
「もう充分です、ありがとうございます。」
美沙は本当のことを言う。
「あ、じゃあそこでちょっと休憩してこ。」
及川はベンチを見つけて指差し、美沙はそれに従った。
しばし2人はベンチに座ってのんびりと休んでいた。休日だけあって辺りは結構人が行き交っている。美沙はふと義兄の力はどうしているだろうかと考えた。成田や木下あたりとメッセージアプリでやり取りでもしているだろうか。あるいは相手が梟谷の赤葦かもしれない。どのみち義兄が弄られまくるメンバーばかりであるが。
「どしたの、美沙ちゃん。」
「いやちょいぼーっとしてもて。滅多に外出ぇへんから疲れたんかな。」