第42章 【妹貸し出し当日 その3】
「またレトロな言い方してさっ、しかも何気に縁下君の妹なだけあるよね。」
美沙ははて、ととぼけ、他に目当てのキャラのグッズがないか探しにかかった。その間にも及川はあれは何これは何と聞きまくり、美沙はご丁寧に説明する羽目になった。そういうのを流せないのが縁下美沙である所以(ゆえん)かもしれない。しかし聞かれた事にはほぼ全部説明した美沙が一つだけはっきり出来なかったものがあった。
「美沙ちゃん、この本何。さっき言ってた二次そーさくの本みたいだけど。」
「15歳にはカンケーないもんやと思います、多分やけど。」
「あ、何となく察した。」
察した及川はしつこく聞かなかった。
しばらくしてからのことである。
「良かったわぁ、好きなんあって。」
美沙は大変満足そうな顔をしていた。手には先ほどのアニメグッズ専門店の袋、しかしそれは小さい奴で数を買った訳ではないのがよくわかる。
「美沙ちゃんテンション高かったね。」
及川がクスクスと笑う。
「え、あ、わかりました。」
「抑えてたんだろうけど結構漏れ出てた。」
でも、と及川は付け加える。
「美沙ちゃんあんまり物買わなかったね。しつれーかもしんないけどオタクさんって籠いっぱい買うイメージあったんだけど。マイナーだからあんま買う物がないのかな。」
美沙はああ、と呟く。
「マイナー好きやから、も勿論あるんですけど私は何もかんも欲しいタイプやなくて。」
「そうなの。」
「ホンマに欲しいのがあればそれで充分です。」
答えればふふふと及川は笑う。
「そういうとこも縁下君の気に入りなのかな。」
「はて。」
それは義兄に聞かないとわからない。
「まあいーや、次はどこに行くの。」
及川は楽しそうに言う。
「これ以上私に聞いてよろしいんですか、またえらい事になりますよ。」
「いいよ、また俺が縁のないとこ見るの面白そう。」
美沙は何となくホンマに嬉しそうやな及川さん、と思った。
次章に続く