第42章 【妹貸し出し当日 その3】
「及川さん」
「俺は何もしてないよ、あっち見ただけ。」
「何かようわからんけど、ありがとうございます、お手間かけました。」
「だーかーらー、気にしちゃだめ。ところで美沙ちゃんさっきからめっちゃ探してるけどどしたの。」
美沙はんと、と呟く。
「好きなキャラのグッズが全然ない、よーな気ぃする。」
「俺も探したげるっ。で、どのキャラ。」
美沙はガジェットケースから愛用のスマホを取りだし、ウェブで画像検索をかける。画面を見せられた及川が苦笑した。
「また随分とマイナーな。」
「せやけど最近活躍する話があって結構認知されてきてるんですよ。」
「そーなんだ。」
及川はクスクス笑う。馬鹿にされていないことはわかったが笑われている理由がよくわからなかった。
しばらくコーナー内を2人でウロウロしているうちに美沙はやっと目当てのキャラのグッズを探し当てた。
「あった、やった。」
思わず顔がほころぶ。
「しかもストラップやん、ラッキー。よっしゃこれは買いやな。」
「美沙ちゃん、嬉しそうだね。」
「すみません、ついうっかり。」
「いいよ、そっちの方が俺もいいもん。ところでさ、」
及川がニヤリと笑う。何やろと身構える美沙に及川は言った。
「このキャラ縁下君に雰囲気似てない。」
ギクッとしたのはまずかった。
「しかも背番号6番じゃん。」
更に美沙はギクッとし、及川はニヤニヤと美沙を見つめる。
「おにーちゃんとこのキャラどっちが先なの。」
「そんなん兄さんが先に決まってますやん。私この漫画知ったん名前が縁下になってからやもん。」
美沙は顔を赤くしぷいっとそっぽを向く。
「怒んないでよ、気になっただけじゃん。」
「もーすぐに人のことおちょくってからに、岩泉さんに言うたる。」
「だからっ、すぐ人を脅しちゃいけませんっ。」
「ホンマ岩泉さんには弱いんやねぇ。」
美沙は思わず笑う。及川はむぅとした顔をして呟いた。