第42章 【妹貸し出し当日 その3】
さて、家で落ち着きなく室内をウロウロしている力は置いておいてその義妹である美沙と及川は美術館を出てから店に入って昼食にしていた。
「改めて思ったけどさ、美沙ちゃんて結構食べるよね。」
美沙が頼んだものを見て及川が呟く。
「何か食べへんかったら保(も)たんくて。」
美沙は視線を落とし、サラダを口に運んだ。小エビ入りのそれは頼んだ時に店員に取り皿はいるかと聞かれたくらい結構な量だったが美沙はこの系列の店に入ると必ずこれを頼み、しかも1人で全部食べる。勿論メインでドリアとパンも頼んでいたから、及川でなくてもどんだけ食うのかと思うだろう。
「それでそんなに細いんだからびっくりだよ。」
「別に私は。運動してへんからお腹出てるし、ってどないしはったんですか。」
ぶっと吹きそうになるのを堪えた様子の及川に美沙は首を傾げる。
「ご、ごめん、堂々と運動不足で腹出てるって公言する子初めてで。」
「だって見りゃわかるのに隠したってしゃあないし。」
「外見コンプレックス強い割には割り切るねぇ。というかそんなにコンプレックス持たなくてもいーのに。」
「及川さんに言われてもあんまし説得力があらへん。」
嫌味のつもりはなくストレートに言う美沙だが及川はうぐっと唸る。
「何だろ、そういうの美沙ちゃんに言われると刺さる。」
「うーん、せやかて及川さんはある程度は自分の外見が他の女の子引き寄せててそういう子に上手いこと言うてる自覚あるでしょ。そういう人に気にせんでええ言われてもどこまで信じてええんかってちょい考えますよ。」
「うう、ホント正直だね美沙ちゃんは。ちなみにおにーちゃんは何て言ってる訳。」
「何で兄さん。」
「だっておにーちゃんの言うことなら信じるんでしょ。」
「こんな時に随分前の意趣返ししはるなんてえげつな。」
ジト目で及川を見つめて美沙はドリアを一口パクリとやり、及川は意趣返しじゃないもんホントの事じゃんと唇を尖らせる。及川にしては子供っぽく見える表情、彼のファンである女子達が見たら何と言うだろうかと美沙は思う。
「まあ話戻して」
またサラダを食しながら美沙は言った。