第6章 【外伝 翔陽と研磨の会話】
「とにかく仲が良くてさ。」
「へえ。いいんじゃない、どうせ一緒に住むんなら。」
翔陽もだよなだよな、と言う。
「縁下さん優しいし、美沙もパッと見あんま顔変わんないけど親切な奴だしさ、きっと兄妹だから似たんだな。」
「いや待って、元は他人なんでしょ。」
「そりゃ顔も言葉もちげーけど似てる。きっと縁下さんの妹だから似たんだ。」
翔陽はきっぱりはっきり言い切る。電話の向こうでドヤ顔をしているのが目に浮かぶようだ。そしてそれは単に似た者同士なんじゃないかと研磨は思ったが無限ループになりそうなので口には出さない。しかし翔陽が妙に熱く語るその義兄妹の話は珍しく研磨の興味を誘った。
「凄いんだね、お互いいきなり兄妹にされたのに仲良くなれるって。」
「縁下さんは美沙のおかげだって言ってた。美沙が一生懸命話しかけてくれたからって。」
「へえ。」
「美沙も恥ずかしがりなんだけどさ。あ、あいつずるいんだぜ、最初俺らには全然関西弁喋ってくれねーの。」
「それは配慮したんじゃないの。」
「そーいやガラ悪いって勘違いしてる人いるって。」
「だろうね。」
よくあることだと研磨は思う。
「今は。」
「バレー部のみんなの前ではバリバリ関西弁喋ってる。でも知らない人とかだと喋んない。あ、研磨知ってた、関西弁って意外とまどろっこしいとこあるんだぜ。俺美沙としゃべるまで知らなかった。」
「そうなんだ。」
「美沙もマジで怒ってる時とか喧嘩の時は関西弁じゃないんだって。遠回しになるから使いにくいとか言ってたな。」
「へぇ、逆かと思ってた。」
「だろ、だろ。」
「お兄さん的にはいい妹で良かったってとこなのかな。」
「うん、縁下さんめっちゃ美沙の事可愛がってる。」
「ふぅん、どんな感じなの。」
「んーと、とりあえず世話焼きまくってる。」
「そ、そぉ。」
仲良いのはいいことだが世話焼きまくらねばならないような妹なのかと研磨は思う。