第6章 【外伝 翔陽と研磨の会話】
「例えば。」
「腕輪買ってあげたり。」
「は。」
「美沙って女の子っぽくなくてさ、お洒落もほとんどしねーからって縁下さんが買ってあげてた。」
電話の向こうで研磨は微かに片眉を痙攣(けいれん)させた。それは兄が妹にというよりまるっきりカレカノじゃないのかと考える。
「でも、その美沙さんってお洒落興味ないんなら貰ったそれどうしたの。」
「どうしたって着けてるぞ。縁下さんがいっぺん買って後からもう1個買ってたのも両方着けてる。」
「訳がわかんないんだけど。」
「他に影山が美沙によくヒョロヒョロだっつってるけど縁下さんに聞こえたら影山が怒られる。」
「え。」
「それに西谷さんが美沙に触ったら縁下さんが美沙に触るなっていうし、美沙にもうかうか触らせるなって怒ってる。」
「ちょっと」
「あっ、あと、美沙になんかあったら部活連れてきて終わるまで待たせてる。」
「待って翔陽、何かおかしい。」
翔陽はへ、と心底不思議そうに呟く。
「前二つもだけど特に最後がおかしい。」
「そーなのか。」
「部活に連れてきてるってもう高1でしょ、ちっちゃい子じゃあるまいし。大体妹になんかあった時って何。」
「親が留守とか美沙が虐められた時とか他の学校の奴が美沙にちょっかいかけたとかあった時。」
電話の向こうで研磨はかすかに顔をしかめた。浮かんだ言葉はもちろん過保護、しかし烏野6番はそんな妙な事をするキャラには見えなかったので意外だ。
「妹も言うこと聞くんだ。」
「縁下さんに笑って凄まれるから逆らえないって言ってた。」
「ああ、ああいうタイプは確かに怒ると怖いかも。でもさ、翔陽も妹いるよね、もし妹が自分と歳近かったらそこまでやる。」
「んー、やらないかも。」
「でしょ。その、縁下君、だっけ悪いけど変わってる。」
「そういや月島とかほかの先輩がシスコンって。」
研磨は軽く吹いた。
「言われてるのか。」
「木下さんとか成田さんがよく過保護、シスコンとか言ってる。」
「だろーね。流石にやり過ぎ。」
「あっ、そーだ、前に次は指輪あげるのかとか言われて縁下さん慌ててたっ。何のことかよくわかんなかったけど。」
「翔陽らしいね。」
言いつつも研磨はさらに顔が引きつる。