第6章 【外伝 翔陽と研磨の会話】
東京、音駒高校男子バレー部所属、孤爪研磨のスマホが突如振動したのはとある夜のことだった。
「はい。」
「あ、研磨っ。久しぶりっ。」
宮城県の烏野高校の友達、日向翔陽である。
「ああ、翔陽。急にかけてくるからびっくりした。」
「ごめん、最近どうしてるかなってなんとなーく気になった。」
「ふ、ふーん。そっちこそどうなの。」
研磨はやや動揺しつつ逆に尋ねる。
「こっち、うーん。あ、先輩に妹出来たんだ。」
「へぇ、随分年の離れた妹さんになるんだね。」
「ん、ちげーよ、学年俺と一緒。」
「え。」
「え。」
2人の話が噛み合わない。
「どういうこと、先輩のとこに妹が産まれたんじゃないの。」
「産まれたんじゃない、出来た。」
「待って翔陽、よくわかんない。」
相手が相手だ、まともな説明を求めるのは無茶かもしれないと思いつつ研磨はさらなる説明を求める。翔陽はうーんうーんと唸りだした。辛抱強く待つ研磨、やがて翔陽はえーと、と話し始めた。
「そいつ元々よそんちの子だったけど、親が死んでばあちゃんも死んでそんで先輩とこの子になった。」
「最初からそう言ってよ、てか何その重たい事情。いいの、そんなことベラベラ喋って。」
「うーん、研磨ならいい気がするっ。」
「全く根拠ないでしょ。まあいいや、誰の妹さんなの。」
「縁下さんっ。」
研磨がえーと、と考える。
「うちの6番の人。」
ああ、と研磨は呟く。そういえば練習試合の時控えにいた。七三分けの地味な見た目、おとなしそうではあるが賢そうでもあるあの約1名、うっすらだが覚えている。
「またその人にも随分な変化だね。」
「でもでも、すっげー仲いいんだぜ、美沙と縁下さん。」
「美沙さんって言うんだ。」
「うん、関西弁でオタクで動画作ってて、スマホ詳しいんだっ。」
「濃いな。」
「研磨と話合うかも。あ、でもゲームはあんましないって言ってたなぁ。」
「まあ何でもいいけど。」
翔陽の話は続く。