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【ハイキュー】エンノシタイモウト第二部

第41章 【妹貸し出し当日 その2】


「もー、いらんこと言うて。」

美沙はブツブツ言った。

「いいじゃん、別に。本当の事だし。」
「私は別に優しない。」
「はいはい。」
「あ、流しよった、この人。」

美沙は膨れるが展示された絵に目を向けた瞬間にはもう顔つきが変わっていた。その視線の先にあった作品のプレートには奄美の杜⑨ ビロウとアカショウビンとある。シルエットで描かれた岩の上にとまるオレンジっぽい、しかし頭や羽が紅い大きな嘴(くちばし)の鳥、バックにはやはりシルエットで描かれたビロウの葉、反対にカラーで描かれたハマユウなどの周囲の植物、くっきりした対比に引き込まれて目を離さない美沙の様子は後で及川が語ったところによると絵の中に入るつもりなんじゃないかと疑ったという。

その後も美沙は絵の中に入り込まんばかりに展示された作品を見つめていた。美沙なりに楽しそうで及川としては満足だった。

そうやってゆっくりと鑑賞し、2人は美術館の外に出る。

「やー、良かったわぁ。」
「美沙ちゃんてばむっちゃ見てるんだもん、俺絵の中に入るつもりかと思ったよ。」
「いやでもあれは引きずり込まれそうになりますよ。」
「わかんなくもないけどね。」

及川がふふと笑う。

「及川さんはどないやったんです。」
「俺。」

聞き返す及川に美沙はうんうんと首を縦に振る。

「面白かったよ。」
「私の事ちゃいますよね。」
「それもだけど」
「"も"かいっ。」
「デートにこういう所来るの初めてだったし、絵の事はよくわかんないけど芸術ってこういうのなんだなってのは思ったかな。あと、これも何となくだけどさ、美沙ちゃんが作る事に重き置くのもわかる気がする。」

及川は比較的真面目に話を続ける。

「あんだけの物描くのってきっとすんごい執着とか熱意とか労力がいるよね。しかも普通はあそこまで至らないじゃん。」
「そうですね。私なんかたったあれだけの動画作るのにヒイヒイ言うてアップしたら結果はあの様やから。」
「美沙ちゃんはきっとそれを知っているからいいんだろうね。」
「"いい"てどの方向の"いい"なんですか。」
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