第39章 【妹貸出依頼】
「大好き。」
何度も言っているそれを美沙はまた言う。この人を安心させなければいけないと思った。自分は縁下力から離れるつもりはない事を伝えなければいけない。
「美沙。」
義兄が呟き、美沙を抱きしめる腕に少し力が入った。
「保護されてんのはどっちなんだろうな。」
「え。」
「何でもないよ。」
力が言って、2人はまた唇を重ねた。
しばらく抱き合ったあと、力は美沙の部屋を出て行った。
「大丈夫、やんな。」
力の後ろ姿を見送りながら美沙は呟き、愛用のスマホを取り出してメッセージアプリを起動、高速でフリック入力をして及川にメッセージを送信した。
その一方の事である。
「やったぁぁぁぁぁぁっ。」
「クソ川うるせぇっ、近所迷惑だボゲっ。」
「そーゆー岩ちゃんの方が声でかいじゃんっ。」
テンションが上がったところを家に上がり込んでいた岩泉にはたかれ、及川はブーブー言った。しかし岩泉は知るかと呟く。
「何なんだか知らねーがとにかくいきなり奇声上げてんじゃねえ、このタコ。」
「何さりげにまた悪口のバリエーション増やしてんの。それよりさ、美沙ちゃんデートに誘ったらオッケーきたっ。」
岩泉はへーへーと流しかけていたがふと気づいたのか、おい待てと小さく言う。
「美沙てまさかあの」
「ハンドルネームままコちゃんだよっ。」
「ハアアアッ。」
声を上げる岩泉をこの場合は責められないだろう。
「待てコラてめフラれた分際で何また烏野6番の妹にちょっかいかけてやがんだこの不潔野郎つーか6番の妹もオッケー出すなそもそもあの烏野6番がよく許可したもんだなおい。」
「ちょっと、清潔そのものの及川さんに不潔だなんてひどくないっ。」
「黙れっ、アルコールスプレー吹き付けっぞ。」
「岩ちゃんの返しが進化してるっ。」
「マジでおばさんに借りてくるわ。」
「わわわ悪かったってー。まあ話戻すとさ、先に縁下君説得してオッケーもらって縁下君が美沙ちゃんに話通してくれた結果本人からいいってお声がかかった訳。さすが俺だねっ。」
「へーへー。」
「何て無関心っ。」