第39章 【妹貸出依頼】
「癒しがほしいんだ。」
「ハア。」
「あ、信じてないね。」
「その、うちの美沙が貴方の癒しになるというイメージがどうも。」
「んー、美沙ちゃんてほらあのまんまの感じが落ち着くんだよね、しかも何気にやさしーし。」
力はあの、と呟く。
「俺が言うのもアレですがそれならやっぱり他の子でも良いのでは。貴方の本質を理解して受け入れてくれて、その、もっと見てくれのいい女の子は他にもいるでしょう。」
「いつも言わない見た目の話までしちゃってさ、無理くり言ってんのまるわかりだよ。食い下がるねぇ、縁下君。」
「そもそも貴方は俺と美沙の状態を」
「知ってるよ、だからこうやってお伺い立ててるんじゃん。」
力は困惑した。及川のつもりがまったく読めない。
「無茶言ってるのは承知だよ。」
ここに来て及川は急に真面目な声色で言った。
「そりゃあ俺が必死こいてる情けないとこ知ってる子もいるけどさ、今はとりあえず美沙ちゃんがいいんだ。」
力は沈黙する。及川がここまで言うのは相当の事だとは理解出来るがそれでも意図がわからない。
「もう、粘るなぁ。」
またいつもの調子に戻ってクスクス笑い出す及川に粘ってるのはどっちだと力は思い、ハアと息を吐いてから言った。
「わかりました、いいですよ。」
スマホの向こうで及川がやったーっと声を上げるのが聞こえる。
「そのかわり、」
力は付け加えた。
「条件があります。」
「何々。」
「途中であいつを1人にしたりしないでください、もし変なのに絡まれたりしてたら助けてやってください、あとあいつは活発な方じゃないので結局つまらなかったなんて苦情は勘弁してください。」
「心配性だねぇ、本当過保護。」
「これでも譲歩してますよ、本当なら岩泉さん付きも条件にしたいレベルです、それにあいつは」
「わかってるよ、強がってるけど本当は寂しがりの甘えたさんだもんね。」
力はうぐっと唸る。
「大丈夫だって、君にこやってお伺い立ててんだよ、なんで泣かすよーな真似しなきゃなんないのさ。」
「それはそうなんでしょうけど」
力は呟いてふと気がついた。