第35章 【赤葦襲来 終幕】
「ダメだよ、美沙。」
「何が。」
「かりゃあげ君。」
「私まだ何も言うてへん。」
「目がめっちゃポップの方見てた。」
「べ、別にたまたま目に入っただけやもん。」
「とにかくダメ。」
「ほなせめて飴ちゃん買わせて。」
「仕方ないな、もう。その代わり食べ過ぎるなよ。」
「いやあの兄さん、それ赤葦さんに過保護言われる要因」
「それ以上は言わせないから。」
こうして赤葦京治と縁下力、美沙の義兄妹の休日は終わった。
兄妹はもちろん知らないが休み明け、梟谷学園ではこんな事があった。
「あかーしー、休みどーだったっ。」
「楽しみましたよ。」
「マジかっ、どんなだったんだっ。」
「少なくともまともに日本語が通じる人達だったのでその点大変気が楽でした。」
「え、あかーしー行ったの海外だっけ。」
「ああしまった、木兎さん相手にこの表現は無茶だった。」
ブツブツ言う赤葦に木葉がニヤニヤして言う。
「相当楽しんだみたいだな、何してたのか知らねーけど。」
「わかりますか。」
「なーんか雰囲気がいつもより生き生きしてる。」
「友人を訪ねただけですけどねぇ。」
「何だよ、勿体ぶんなって。」
「勿体ぶってんじゃなくて多分皆さんには理解しづらいし俺も説明しづらくて。俺にとっては夢みたいな経験でしたが。」
「夢、ねえ。」
「いわゆる夢のような、とは違うもっとゆっくりした感じですけど。」
「あれ、あかーしー、スマホの待ち受け画面変えた。」
「何あなたは人のスマホの画面勝手に見てんですか、ほら手も引っ込めて。あなたに触られたせいでパスコードの再設定するのはごめんですよ。」
スマホの画面を隠すように自分側に向けて赤葦は呟いた。その待ち受け画面にはあの時行った水族館の前に立って微笑む自分と縁下力と縁下美沙の写真が表示されている。写る縁下力の片手は義妹の美沙の肩を掴み、さりげなく赤葦から離していた。
「ホントしょうがない兄貴だな。」
「あかーしー、今何て。」
「落ち着きない、空気読めない人はすぐフられますよ。」
「ひっどっ。」
次章に続く