第35章 【赤葦襲来 終幕】
"おい、誰か他にいるのか"
「い、いや、多分気のせぇやと思う。」
「ままコ、お前の声入ってない。」
「げ、アプリ落ちたっ。兄さん、間繋ぐのよろしく。」
「了解、コメント打っとく。えと、ままコのスマホのアプリがいきなり落ちました、しばらくお待ちください、と。」
「妹復帰するまでどうすんの。」
「コメント打って見てる人の相手しとくよ。あ、早速来た。」
「何なんだ、この兄妹。」
赤葦が助けられたこともあった。
「知らないうちにスマホが誤作動してパスコード変わっちゃってわかんなくなった。」
「ええっ。」
「えーと赤葦さん、OSは。」
「これは、何だろう。」
「あ、すみません、端末の形からしてロボット印ですね。それやったらとりあえず何か表示出るまでパスコード入力試してみてください。」
「ボタン出てきた。」
「それタップ。あの、その端末使う時に初期設定でフリーメールのアドレス取得してますよね。」
「ああ、何かやったな。ほとんど使ってないけど。」
「そのアドレス取得した時のユーザー名とパスワード入力してください。あ、私あっち向いてますね、はい、兄さんも。」
「今ちょうど上向いてるよ。」
「流石兄さん。」
「入力終わった。あ、再設定出来る。」
「後はそのまま設定を続けてください。」
「出来た。」
「良かった。」
「ありがとう、流石美沙さんだな、でも端末の形でOS特定って。」
「そりゃ赤葦君、林檎印はある程度規格が決まってるし。」
「そんな答えを返せるなんて君も大概だよ、縁下君。」
「うっ。」
「うって何なん、兄さん。」
「い、いや別に。」
そうやって明日には赤葦が東京へ帰るという日の夜の事である。
「あっと言う間だったね。」
「ああ。」
力のベッドを借りている赤葦は寝返りを打った。
「色々充実してたよ。」
「そう。」
「本当に。自分の周りじゃ見ないことの方が多くて。」
「まぁ西谷がザリガニ釣りに巻き込んで来たのは俺も予想外だったけど。」
「そっちじゃないよ。」
「え。」
「可愛い可愛い君の妹さん。」
「からかわないでくれよ。」
赤葦にベッドを貸す代わりに床に敷いた布団に潜っていた力はモゾモゾしてそっぽを向く。