第34章 【赤葦襲来 第五幕】
縁下兄妹はそろーりと振り返り、赤葦は表情を変えずに声がした方を見た。
「やっぱり。」
縁下兄妹は同時に呟いた。
「やっぱりって何だ、縁下ゴルァっ。」
「そーだぞ、力っ。」
田中と西谷が早速力に絡むが力はそんままの意味だよと無表情で応対、更に田中は飛びかかろうとするが美沙にベシッと自慢の坊主頭を叩かれてぐはっと撃沈した。成田と木下はとりあえず赤葦にこんにちは久しぶりと挨拶、縁下兄妹も愛すべき阿呆共を放っておいてそっちに行く。
「休みの間縁下んとこにお客が来るとはきーてたけど」
木下が言った。
「うん、まさか梟谷の赤葦君とは思わなかったな、いつの間に。」
成田が問うと赤葦がしれっと言う。
「こないだの合宿中にそこの妹さんのことで仲良くなった。」
「赤葦君っ。」
叫ぶ力、しかし成田がじとっとした目で見つめている。
「縁下、お前のシスコンはどこまで広まるんだ。」
「たまたまだよ、たまたまっ。」
「こりゃ全国区になるのも時間の問題だな。」
「木下もやめろっ。」
「既にワールドワイドな気もするけどね。」
「赤葦君、しーっ。」
「それよりお前ら俺と龍を放置すんのやめろっ、さびしーだろがっ。」
「美沙、そこの馬鹿2人頼むよ。」
「ちょ兄さん、丸投げかっ。」
「縁下てめーっ。」
「せやから言うて田中先輩、またうちの兄さんに危害加えたら」
「スミマセンデシタ。」
「美沙、お前最近怒り方力に似てねーか。」
「んな阿呆な兄さんの方がよっぽど怖、いや何でもあらへんです、はい。」
力に笑顔で威圧されて美沙はあからさまに目をそらす。
「へえ。」
ここで赤葦が目を細める。
「あの2人、美沙さんの言う事も聞くんだ。」
「うーん、俺特に田中達に何か言った覚えないんだけど。」
「そりゃあれだろ、」
木下か言う。