第34章 【赤葦襲来 第五幕】

「いっちゃん最初にあいつらが清水先輩の事でお前に突っかかってた時。」
「一体何をしたんだ。」
「俺に危害を加えるなってあいつら2人はたき落したんだよ。」
「まるっきり蝿(はえ)みたいな扱いだな。」
「似たようなもんだよ、五月蝿(うるさ)いだけあって。」
「これは一応アレかな、誰がうまいこと言えとって言えばいいのかな。」
「赤葦君、何か色々適応してないかい。」
「ここしばらく君の妹さん見てたら自然とそうなるよ。」
「私のせぇっ。」
「他に誰がいるんだい、ままコさん。」
「うわあああん、赤葦さんまで弄ってくるー。」
「諦めな、お前は基本弄られキャラだよ。」

義妹をよしよししながらも力はそこをフォローする気がない。

「そんなことよりよっ。」

ここで西谷がビョッと飛び上がって言った。

「力、バレーボール持ってんじゃんかっ、みんなでやろーぜっ。」

野郎共は乗り気である。美沙は自分は除外と思っていた。しかし、

「美沙ー、何でお前そっち行くんだよ。」

西谷に言われて思わずへ、と間抜けな声を上げた。

「お前も一緒に決まってんだろっ。」
「兄さん。」

おずおずと視線でお伺いを立てると義兄の力はいつものように微笑んでいた。

「おいで、美沙。」

美沙は頷いてタタッと野郎共の輪に入った。

そうして野郎共5人と明らかにへっぴりごしの女子1人はバレーボールに興じていた。

「ローリングサンダアアアっ。」
「西谷っ技名つけるなそして叫ぶなっ。」
「今の何。」
「気にしないで赤葦君。」
「縁下妹ー、そっち行ったぞぉー。」
「ふぎゃあああっ。」
「って叫んでるけど返せてんじゃん。な、成田。」
「変に自信ないとこは誰かさんに似てるな。」
「成田っ、どーゆー意味だっ。」
「そのままー。」
「前から思ってたけど縁下君の仲間は面白いな。」
「木下と成田はともかく他は世話が焼けるよ、ホント。」
「兄さん、そっち行ったでー。」
「オーライ。」

青空を背景にバレーボールが上がっては落ち、上がっては落ちを繰り返す。

「縁下妹っ、トスだトスっ。」
「ちょちょちょ、無理ーっ。」
「上がった上がった、美沙ナイスっ。」
「木下先輩、後頼みます。」
「あいよっと。」
「結構奮闘してるじゃん、美沙さん。」

赤葦がくすりと笑って力に言った。