第33章 【赤葦襲来 第四幕】
「酷い事言うな。」
聞こえていたのか赤葦が呟いた。
「仕方ないよ。」
力は苦笑する。
「良くあることだし。」
「そういう問題じゃないだろ。」
「まあそうなんだけど。」
力は言ってやはり眠ったままの義妹の手を握りなおし、ふと美沙に対しよからぬ事を言った少女達に目をやる。目があった瞬間、力は彼女らに微笑んだ。途端に少女達は青ざめてこちらから目を背けて沈黙してしまう。
「何したの。」
赤葦が尋ねてくる。
「いや、その、別に。」
力は自身も動揺して言った。
「ちょっと見つめ返してみただけ、なんだけど」
「向こう軽く怯えてるよ。」
「なんでだろ。」
よくわからず力は首を傾げる。
「まあ、とりあえず美沙が寝てて良かった。こいつの耳に入れたくなかったから。」
「そうだな。」
ここで赤葦はふと呟いた。
「これ立場逆だったら美沙さんどうしただろうな。」
「あー、ちょっと危ないな。」
力はまたも苦笑する。
「怒って突撃しそう。」
「そんなに。」
「兄妹になって日も浅い時に俺の悪口言ってきたって人に言い返すような奴だから。」
「激しいな。」
「ハハ、まだいいよ、直近なんかうちの1年マネの子が変なのに絡まれてたとこへ助けに入ったんだから。」
「それ無事だったのか。」
「あー、それが、その」
「何かあったのか。」
「怪我した。」
「肉弾戦やっちゃったのか、この細腕で。」
「いや、美沙は手を出さずに穏便に済ませようとしたんだけど、相手に逆ギレされて突き飛ばされるわ蹴られるわで。」
赤葦はそれも酷い話だ、と呟く。
「それもなんだけどこいつこっち来るまでも色々あったせいなのかな、すぐ自分を後回しにするんだよな。」
「自己犠牲の傾向がひどいんだな。そうか、君の過保護はつまり」
言いかける赤葦にやはり力は困った笑顔でハハハ、と言った。
次章に続く