第33章 【赤葦襲来 第四幕】
「お手洗い混んどってとても中で直す間(ま)が。」
「そりゃ仕方ない。」
「美沙、ちゃんと出来るか。」
「縁下君、過保護にも程があるよ。1人で出来るようにさせないと。」
「う。」
「子供の躾(しつけ)かっ、私は何歳児やっ。」
「16歳児かな。」
「私15。」
「おやおや、どうりで。」
「どうりて何ですのん。」
「勘弁してくれよ、赤葦君。で、美沙、直せたかい。」
「でけた。」
「うん、大丈夫だな。」
「自分があげたリボンだからってそんなに気になるかい。」
「どうせなら綺麗につけてほしいから、って、何で俺があげたって知ってるのっ。」
赤葦はさぁ、ととぼけるがあまり目を合わせない美沙がじーっと赤葦を見つめている。
「何、美沙さん。」
「赤葦さんて東京方面ですよね。」
「そうだよ。」
「こないだの合宿ん時て音駒もおったんですよね。」
「そうだけど。」
「兄さん、容疑者は音駒の血液poetic主将やで。」
「美沙、変なとこで英単語使わなくていいから。」
「確かに黒尾さんだけどよくわかったね。」
赤葦がブブブと吹き出すのを堪えながら言う。
「リエーフと犬岡には言うてへんし私他にそっち方面の学校で知ってる人おらへんしって思たから。」
「身内の可能性は考えないのか。」
「谷地さんとか清水先輩は必要なかったら言わへんやろし、月島には月島語でお説教されたけどあいつも勝手にバラさへんやろし。」
「月島語。」
赤葦はさらにツボに入ったのか俯いて肩を震わせている。
「あいつ人の言葉回りくどい言うといて自分も山口と菅原先輩以外はわからん言い方する、よーな気ぃする。」
「わからなくもない。」
「わかるのか。」
力は苦笑し、赤葦はやはりまだ肩が震えている。
「次月島君に会った時笑っちゃったらごめん。」
「いや、やめてやって。」
「おまけに私またお説教コース確実ですやん。」
「その場合は事後承諾。」
「兄さん、お友達がわけわからん事言うてはるよ。」
「こっち来るまでに何かあったの、赤葦君。」
「そこのままコさんが愉快すぎるせいかな。」
「なんでやねんっ。」
「弄りがいのある兄妹だ。」
「赤葦君、それ何か違う。」
静かにだが盛り上がりながら3人はしばし喋っていた。