第33章 【赤葦襲来 第四幕】
流石に疲れて3人は休憩を取った。休憩スペースの一角に陣取り、しかし美沙はお手洗いに行った為に力と赤葦は待っている間2人でしばし話す。
「結構面白かったな。」
「主に美沙さんが。」
「おいおい。」
苦笑する力に赤葦が言う。
「冗談はともかく写真見た時から思ってはいたけど可愛げはあると思った、やっぱり。」
「そうかい。」
「あんだけ単純に喜べるあたりが、ね。」
「単純に喜ぶんならそっちの主将さんもそうなんじゃ。」
「ごつい野郎と華奢(きゃしゃ)な女子とじゃ比べ物にならないよ。」
赤葦がここで自販機で買ったジュースをずずっとすすり、力をちらりと見る。
「縁下君が可愛がるのも何となくはわかった。」
「そう、なの。」
「ちょっとした事でも喜んでくれるんならそりゃ嬉しいし、可愛いと思っちゃうもんかもなって。」
力はハハと苦笑する。
「まあそんなとこかも。」
「でも殆ど手を繋ぎっぱなしは病気。」
「赤葦君にまで言われちゃ形無しだな。」
「他にも言われたのか。」
「チームの2年仲間から何度も。」
「言われても仕方ないな。」
「どころか俺の上に病院建てるとかむしろ建てた病院が逃げるとかボロカスでさ。」
「その発想はどこから。」
「成田か木下あたりが面白がってネットから仕入れた可能性が濃厚。美沙が吹き込んだ可能性も否定出来ない。」
「なるほど、じゃ次は牢屋かな。」
「俺は罪人(つみびと)か。」
「ところで美沙さん遅いな。」
「混んでるんだろうけど。」
「連絡入れたりするなよ。」
「流石にそれはないって。」
赤葦に弄られる力、更に2人が待つ事しばし。
「お待たせー。」
ガジェットケースを斜めがけした細っこい姿がてってってっと駆けてきた。
「おかえり、美沙。」
「ただいまー。」
「あれ、大丈夫か。」
美沙がゴソゴソとリボンを直そうとしているのに気がついて力が言う。