第33章 【赤葦襲来 第四幕】
「色々知っとかないと対応出来ないな。」
「まぁね。でも勉強になるよ。」
「物は考えようだな。」
当の美沙は何とか鉄砲魚の姿を見ようと一生懸命背伸びをしているがうまくいっていない。
「美沙、多分お前の背丈じゃ無理だよ。」
「うう、やっぱり。」
「隙みてうまく入り込んだらいいんじゃない。ただしお兄さんは一遍手を離すこと。」
「赤葦君、言い方。」
「そうそう迷子になりゃしないって。」
「そっちじゃないよっ。」
野郎どもが言い合っている間に美沙はうまい具合に前の方へ入り込めそうな隙間を見つけていってくる、と潜りこんでいく。
「縁下君は行かないの。」
「こっから何とか見えるし、俺が行ったら他の子達が見えないよ。」
「それもそうか。それじゃ俺も一緒だ。」
「あ、今水鉄砲やった。」
「美沙さん大歓喜だろうな。」
そのまま何だかんだ言いながらはしゃぐ美沙を中心に過ごしたようなものだった。
アザラシなどの海獣が集められているエリアに行けば美沙は泳ぐそれらの姿に釘付けになり、他にも海月(くらげ)がいるとすっ飛んで行こうとしたり、ジンベエザメの口のあたりを凝視したかと思えばついでに小判鮫がどうやってジンベエザメの下にくっついているのかよく見ようとしたりする。
「兄さん兄さん」
「今度はどうしたんだ。」
「頭の上、ごっつい魚が泳いでるで。」
「凄いな。」
「あれ何やったかなー。」
「覚えがあるのか、美沙さんは。」
「とりあえず食べられるって聞いたようなちゃうような。どっか書いてへんかったっけ。」
「一応何らかの情報は出てくるのか。」
「というか美沙、食えるか食えないかの情報に重きを置いてないか。」
「きっと気のせぇ。あ、今度はアロワナさんやで、兄さん。」
「あれは何アロワナなの。」
「シルバーアロワナ、あ、そこにも書いてる。」
「やっぱり木兎さんにその記憶力見習ってほしい。」
トンネルになっているエリアを歩きながら3人は明るい緑の藻の中を泳ぐ密林地帯の魚達を眺める。赤葦からすれば驚く事に、縁下力はこの間中も義妹の手をほとんど離そうとしなかった。