第33章 【赤葦襲来 第四幕】
「そら、出来た。」
「あい。」
「はいって言ったつもりかな。子音ぶっ飛んでるよ、美沙さん。」
「ああ、またやってもた。」
「よくやるのか。」
「とりあえず行こっか。美沙、手出しな。」
「兄さん、もうええんちゃうかな、なんて。」
「却下。」
「うそん。」
「病気だな。」
「気のせいだよ。」
3人は何だかボケた会話をしながらまた歩き出した。
そうして3人は水族館にたどり着いた。はたから見れば不思議だっただろう。クール系イケメン1人、優しそうな地味メン1人、見た目だけは大人しい地味リボンの女子1人、メンツだけでもバランスが悪いのに地味リボン女子は地味メンに手を引かれてしかも相手を兄さんと呼んでいる。そんな3人は早速入ってすぐの大きな水槽に近づき、中で泳ぐ様々な魚を見つめていた。
「おおー。」
美沙が小さくだが声を上げる。
「兄さん、凄いで、あの魚の群れ。」
「うん、何かスイミー思い出すな。」
「"ぼくが、めに なろう。"」
「そこで引用来るか。美沙さんの記憶力半分でいいからうちの木兎さんに分けて欲しいところだな。」
「ここに来てまで心配してるなんて赤葦君大変だな。」
「赤葦さんはおかんポジションの方ですか。」
「どうだろう。」
話しながら結構混んでいる中を3人は進む。
「美沙、いるかい。」
「おるよ。」
「手握ってる癖に心配性だな。」
「あ、ああ、つい。」
「兄さん、クマノミおった、クマノミ。」
「わかったから引っ張らないで。」
「美沙さんテンション高いな。」
「好きな物見ると急にはしゃいじゃうんだよな。」
「あれカクレクマノミか、映画の影響かい。」
「あいつの場合は関係ない、そのずっと前から知ってたって。理数系は苦手な癖にそういう事は覚えるんだから困ったもんだよ。」
「とか言いつつ顔笑ってるよ。」
赤葦に指摘されて力は顔を赤くし、はしゃぐ美沙の頭を軽く押さえてイソギンチャクの中にいるクマノミに目を移す。水槽に映る赤葦が少し笑っていた。
更に3人は進む。
「あ。」
美沙が声を上げ
「今度は何かな。」
赤葦がほんの少し面白がってるように言う。
「スズキ目テッポウウオ科が。」
「鉄砲魚だな、はいはい。」
「その流れもいつもなの。」
「そうだよ。」
力はふうと息をつく。