第33章 【赤葦襲来 第四幕】
縁下兄妹は赤葦に突っ込まれていた。
「あのさ、縁下君。」
「何。」
「おかしくないか。」
「何が。」
「何がって。」
赤葦は乏しい中にも困惑した表情を見せた。無理もないかもしれない。今彼と歩く縁下力とその義妹、美沙は白昼堂々手をつないでいたのだから。
「俺は知ってるからって開き直ってるだろ。」
「線越える前から俺らはこうだよ。」
「ちょお兄さん、それ流石に堂々と言うたらあかんて。あの、私は別に手を繋ぎたいとか言うた訳やなく」
「美沙は黙ってな。お前が気をつけないとすぐ人混みに流されたり車にひっかけられかねないからこうなるんだぞ。」
「そういう問題なのか。」
赤葦が突っ込むが力は聞かない。意外と頑固なことである。もしこの場に成田と木下がいれば散々に突っ込みを入れて流石の力も考えただろうがもしもの話をしても仕方がない。
「ああ、ほら言ってたら今度はリボンほどけかけてるし。ごめん赤葦君、ちょいたんま。」
言って力は足を止め、義妹のリボンを直してやる。赤葦はやれやれと首を横に振った。
とりあえずこいつらは何やってるのかというと水族館へ行くところである。折角だから3人で何処かへ行こうという話が持ち上がり、どうしようか考えていたところへ意外にも美沙が発言した結果である。
「確かに過保護だな。」
美沙の髪のリボンを直してやる力を見て赤葦が呟く。
「そうかな、やっぱり。」
「そう、と俺は思う。少なくとも俺が兄貴なら歳がそんだけ近い妹と手繋がない。それに普通なら妹も嫌がる気がする。」
「えと、その赤葦さん、それて即ち」
「されるがままの美沙さんも変わってると思う。」
「うう。」
「赤葦君の言う事はわかるよ。」
力は言った。
「自分でも変なのはわかってる、でも」
「大体わかる、どうしてもそうしたいんだろう。仕方のないお兄さんだな、ねえ、美沙さん。」
「えと。」
「赤葦君、美沙を困らせないでやってくれよ。」
「俺はお伺いを立てただけだよ。」
苦笑する力に赤葦は表情を変えずに言うがどこか面白がっているような言い方だ。