第5章 【花見】
「こっちは私の。」
清水も言ってレジャー用の大きな弁当箱を取り出す。田中と西谷のテンションが急上昇し、飛び上がった西谷は澤村に危ないから跳ねるなと怒られる。
「美沙は。何か持ってきてなかった。」
日向に尋ねられ、モジモジしていた美沙はそろっとプラスチック製の重箱を引っ張り出した。
「私の、これ。」
これまた野郎共はおおーと声を上げた。
「縁下妹が料理してきたか。」
「美沙っ、よくやったぞっ。」
「ホント、あの料理コンプレックスの子がよくやってくれたな、縁下。」
成田が少し驚いて力に言う。
「せっかくだからって自分からやったんだ。食べられるのは保証するよ。」
「お前が前にあの子の弁当普通に食ってたからそっちは心配してないけど。」
そうこうしているうちに弁当が披露され、早速日向、西谷、田中が食いつく。
「潔子さんの手料理っ。」
「うめーっす。」
田中、西谷が涙を流す様は正直異様であり木下と成田が出たよと苦笑する。
「谷地さん、これおいしいなっ。」
「ありがと、日向。」
「まったく、日向ほんとに高校生。」
「アハハハ。あ、ツッキー、これおいしいよ。」
「んで、これは美沙ちゃんか。」
重箱の方に最初に手を伸ばしたのは菅原である。
「おっ、うまいじゃん。」
義兄と日向以外に褒められたのは初めての為、美沙は顔が真っ赤になる。
「あ、ありがとうございます。」
おにぎりが清水のに比べて明らかに形が歪(いびつ)なのを気にしていたところだった美沙は嬉しいけれどもかなりパニックだ。更に菅原は余計な事を言い出す。
「縁下ー、良かったなーいい嫁出来てー。」
「ちょおっ、またこの人はっ。」
「菅原さんっ、外でそれは勘弁してくださいってっ。」
義兄も困って声を上げている。
「いーじゃん、別にぃ。似たよーなもんだろー。」
「違いますってっ。」
「美沙ちゃーん、兄貴がまだあんなこと言ってんぞー。そっちからも婿に欲しいって言ってやれー。」
「何の話やーっ、そーゆーのを日本語でおkって言うねんっ。」
「ったくー、兄貴も兄貴なら妹も妹だな、似た者夫婦めっ。」
「菅原さんっ。」
「ええ加減にしなはれーっ。」
「大地、スガは酔ってんのかな。」
「アルコール持ち込んだ馬鹿はいないはずだが、うーん。」