第5章 【花見】
「西谷が言わなくてもお前どっかで妹連れてきていいか聞いたんじゃね。」
「おい、木下。」
「うん、俺ももし話がなかったら逆にびっくりする。」
「成田、お前もか。」
「今回はついでに月島に助けられたみたいだけど。」
「気づいてたのか、人が悪いな。」
茶を飲みながら苦笑する力に成田はニッと笑った。
「俺も突っ込み疲れってのをするようになったからさ。いいだろ、それくらい。」
「仕方ないな。」
力は言いながら辺りを見回す。義妹は清水、谷地の女子組と一緒に話をしていた。若干戸惑いはあるようだがやはり楽しそうで兄としては何よりである。舞い散る桜を背景に語り合う3人は絵になるなと力は柄にもないことを思う。花見客は他にもいて大人子供問わず多くの人が盛り上がっていた。早くも酔っ払っている大人は要注意かもしれない、義妹含め女子組が巻き込まれては困る。
「今年はまたよく咲いたなー。」
澤村が言うのが聞こえた。
「ああ、綺麗だ。儚(はかな)いってこういうのを言うのかな。」
「またこのネガティブひげは。いきなりしんみりか。」
「いいだろスガ、勘弁してくれよ。」
「ま、今日くらいはいっかー。」
「ハハハそうだな、今日くらいはな。」
「お前ら何でそんな容赦ないんだよ。」
「すっげー、桜すっげー。」
日向が声を上げるのも聞こえる。
「日向さっきからそればっかりだね。」
山口が笑う。
「語彙がないのもたいがいにしてほしいんだけど。」
「だってマジすっげーもん。こんだけ咲いてるんだぜっ。」
「つか日向いきなり立つな、ボゲェっ。俺の手踏みそうになってんだろがっ。」
「悪かったよ、けどボゲボゲ言うなっ。」
「王様の悪口のバリエーションも増えずじまい、やれやれだね。」
「うるせーぞ、月島っ。」
「でもツッキー、影山の語彙増えたらそれはそれでびっくりじゃない。」
「山口てめーっ、フォローしてーのかちげーのかどっちだっ。」
「わわっ、ごめん。」
「馬鹿。」
「あっ、花びらがコップに入ったっ。」
「何かいいね、それ。」
1年達も盛り上がっているようで力は微笑ましく思い、桜を見上げた。
なんやかんやと皆が話をしているうちに日向や西谷、田中あたりが腹減ったと言い出したので食事にすることになった。
「はいっ、お弁当ですっ。」
谷地が元気よく言ってバスケットを取り出した。野郎共が色めき立つ。