第32章 【赤葦襲来 第三幕】
「妹さん、いくら何でも入力早すぎない。スマホ強いってのは聞いてたけど。」
「俺はもう慣れた。スマホ初めて持った時にアプリ使ってフリック入力の練習したんだって。最初は全然うまく行かなかったらしい。ひと月かかったって。」
「充分じゃないか。パソコンもそうだけど好きこそ物の上手なれ、だな。」
呟く赤葦に力はニヤっとした。
「まだまだあんなもんじゃないよ。」
「へえ。」
野郎共がそんな話をしている間に美沙は送信を終えたらしい。
「よっしゃ、完了。」
「ちょっと待って。」
スマホの画面をホームに戻す美沙の手元を見て赤葦が声を上がる。
「そのスマホ物理的にボタンついてるよな、今ボタン押したかい。」
「押してないです。」
美沙はしれっと答える。
「一体何したの。」
「えーと」
言いながら美沙がフリックして引き出したのはいわゆる通知領域で、そこに何やらアイコンがある。
「これタップして戻りました。」
「そんな機能あるの、このスマホ。」
「いや、アプリ使って出来るようにしました。」
「また何で。」
「ボタンの劣化をちっとでも遅らせたくて。」
「じゃあ何で物理的にボタンある機種にしたんだ。」
「この機種にしかないどうしてもほしい機能があったんです。」
「それはわかったけどさ。」
よく見れば通知領域にはアプリのアイコンと思しきものも並んでいる。
「これまさかタップしたらそのアプリ起動するの。」
「はい。」
「この仕掛けも何かのアプリ使ったのか。」
「はい。」
「一応聞くけど何で。」
「よう使うアプリに切り替える時、ホームに戻るんが面倒臭くて。」
「どんだけ。」
「あと、私よう電話帳アプリどこーになるんでここに置いとくと起動しやすくてですね。」
「縁下君。」
赤葦は助けを求めるように力を見やる。しかし
「通常運転だよ。」
義兄の方もしれっと抜かした為、赤葦はため息をついた。