第32章 【赤葦襲来 第三幕】

「美沙さんもわりと苦労してるんだ。俺少し誤解してた。」
「へ。」
「人の面倒も見てるんだな。」
「差がひどいんだよ、こいつ。だから半分ボケって。」
「ちょ、兄さんっ。」
「因みにお兄さん以外で言ってるのは。」

赤葦に聞かれて美沙はムスッとした。

「月島。」
「ああ。」
「それからコーチの烏養さん。」
「おやおや。」
「おまけに他校で青葉城西の岩泉さん、及川さんは半分どころかモロに天然ボケて。」
「他校に言われるってどんだけなの。」
「私は知らんです。」
「言われても仕方ないだろ。」
「まぁこんだけパソコンに色々入れてて普通だと思ってる時点でそうだな。」

赤葦にとどめを刺された美沙はなんということやとブツブツ言う。

「美沙さんをうちの木兎さんにぶつけてみたらどうなるだろ。」
「よしてくれよ、」

力が顰(しか)めっ面をした。

「何言われるやら。こないだ音駒の灰羽君が勝手に写真見せた時に速攻地味リボンって言われたんだぞ、申し訳ないけど悪気ない分大変そう。」
「事実だから申し訳なくないよ。まあそれでもあれだな、木兎さんのあの馬鹿っぷりと美沙さんのオタクぶりでどんなやりとりになるかやっぱり興味ある。」
「どう考えてもカオスだな。」
「あのー」

ここで美沙が口を挟んだ。

「木兎さんて赤葦さんとこの主将さんやったっけ。」
「そうだけど、知ってるの。」
「兄さんから話聞きました。そんでその主将さんに私の顔が割れてる訳ですね。」
「ああ。」
「オッケー、ほな私リエたんに文句のメッセ入れてくる。」
「リエたんて。」

赤葦が首を傾げると力が補足した。

「灰羽君だよ。」
「ああ、リエーフだからか。そんな話してたなそういや。」
「灰羽君が面倒くさくなってきた時と余計な事した時限定だけど。」
「つまり今回は余計な事をした方か。」

義兄の力が赤葦とそんな会話をしているのをよそに美沙はスマホを取り出して音駒の灰羽宛にメッセージアプリからテキスト入力を始める。

「あのさ、」

その様子を見ていた赤葦はボソッと言った。