第32章 【赤葦襲来 第三幕】
「変な感じだな。」
「仕様上しゃあないとか何とか。」
「でもこんなの何に使うの。」
「自分の声の代わりにナレーションとして動画に合成したり、パソコンからライブ配信する時にコメントを読み上げさせたりに使ってはる人が多いです。」
「コメント読み上げさせてどうすんの。」
「画面でコメント見なくてもある程度対応出来るようになります。漢字の読み上げに不安がありますけど。」
「なるほど。君は使わないの。」
「今度パソコンからのライブ配信に使おかなって。」
赤葦はここでまた力を見た。
「妹さんはまた何か企んでるみたいだよ。」
「大丈夫、1人でさせないから。」
「ちょお、兄さんっ。」
美沙が顔を赤くする。
「もー兄さん、また見てる人にシスコン言われるで。」
「というか既にあちこちで呟かれてそうだな。ままコのいるとこまま兄ありって。」
「既に常連と化した人らからワンセットや思われてます。」
「マジか、困ったな。」
「自分が蒔いた種だろ。」
「You reap what you sow.(蒔いた種は自分で刈りとれ)」
「美沙、そういうのは日向とか影山がいる時にして。」
「あの変人コンビか、学力に難ありなのか。」
「大事な時に補習くらったくらいだから。」
「私より谷地さんが可哀想やで、せっかく奮闘したのに。」
「そうだな。」
「どんだけだったんだ。」
赤葦はやや呆れたように呟く。そもそも話がえらいところにまで発展した為戸惑いもあるようだ。
「まぁとりあえずシャツのボタン取れた言うて来るんやなかったらええです。」
「よく言っておいたからさすがにもう大丈夫と思うけど。」
「それもまたどういう状況。」
尋ねる赤葦に力がかつて日向と影山が勢い余ってお互いを掴んだ時に制服のボタンが取れてしまい美沙と谷地がいるクラスに飛んできた話をして、赤葦はやはり吹いた。
「2人は美沙さんがいなかったらどうするつもりだったんだ。」
「多分なーんも考えてへんかった思いますよ。」
言う美沙に義兄の力も同意する。赤葦はんーと少し唸ってから言った。