第29章 【ハミチキとかりゃあげ君】
京谷はチッと舌打ちをして調子狂うとかなんとかブツブツ言った。
「兄貴が過保護って。」
「ええ、まぁ。」
それがどうしたのか美沙はよくわからず首をかしげるが京谷がそれ以上言わなかったのでやはり踏み込む事はしなかった。
そして美沙は京谷に礼を言って別れた。ぶっきらぼうではあったがなかなか悪くない人だったと思う。下衆の勘繰りとは思うがひょっとしたらあのぶっきらぼうの為に部活で何やらあったのかもしれない。そんな行き違いで面倒な事になるのは自分も経験がある。もしそうならの話やけど、と美沙は思う。今後京谷さんもうまく行くとええな。
家に帰ると美沙はまだ部活中であろう義兄のスマホに一応無事帰宅した旨を連絡した。ただ、大分後になって義兄から返信が来た時に少しギクリとした。
"いつもより戻り遅かったね。どうしたの。"
まさか揚げ物を買い食いしてしかも会ったばかりの青葉城西の人と話してたとは流石に言いにくい。
"ちょっとウロウロ散策してた。"
"帰ったら話がある"
「ふぎゃああああっ。」
美沙は思わず叫んだ。
「やばい、どないしょう。」
これは間違いなくごまかしているのがばれている。美沙はそうやってどないしょうとオロオロしていたが結局のところどないしょうもこないしょうも出来ず、帰ってきた義兄の笑顔の圧力に屈して事の次第をはかされた挙句、しばらく家のご飯以外で油物を食べるのは禁止と申し渡された。
「いやあの兄さん」
だが美沙は今回恐る恐る抵抗してみた。
「私別にダイエットしたいとか言うてる口やなしそないに」
「何。」
「ふぎゃあっ。」
にっこり笑って黒いオーラを発する義兄の力はやはり怖い。
「後ね、美沙。」
「は、はひ。」
「知らない男とうかうか呑気にお喋りしないように。」
「う。」
「と言うわけでお仕置き。」
「それは嫌やっ。」
言っても逃げきれない訳で美沙はやはり散々にくすぐられて息も絶え絶えになってしまった。