第28章 【リボンの話】
やがて2人は分かれ道に来た。
「じゃあ俺こっちなんで。」
「おう。」
「ホントすみませんでした、俺がモタモタしてたばっかりに巻き込んじゃって。」
「何の話だ。」
「助かりました、ありがとうございます。では失礼します。」
「おー、またなー。」
力は礼をして歩き出す。花巻はそんな力の後ろ姿を見送りながら後頭部をガジガジと掻いていた。
「気づいてたのかよ、あの野郎。」
そうして力は家に帰り、自室へ行こうと二階へ上がるといつものように美沙が部屋から出てきた。
「兄さん、おかえり。」
「ただいま、美沙。」
「休みの日も大変やねぇ。」
「まぁ好きでやってるから。あ、そうだ美沙、これあげる。」
力は早口で言って先程買ってきたリボンの入った包みを美沙に渡す。
「え、あ、ありがとう。開けていい。」
「うん。」
「あ。」
美沙は包みから出てきた2本のリボンと力の顔を交互に見る。
「髪につけなよ、たまにはそういうのもいいだろ。」
「う、うん。」
美沙は戸惑いながらも頷く。きっと意図があって与えられたことには気づきながらも確信がないといったところだろう。安定の半分ボケだ。
「嬉しい。ありがと、兄さん。」
そんな半分ボケの笑顔にやはりドキリとする力であった。
その後音駒高校との練習試合で撮影要員に引っ張り出された美沙はこのリボンのうち1本をつけてきた訳である。力の意図は後輩の月島にはバレバレでそれはまだ想定内だったが、音駒高校男子バレー部の一部やもっと後になって梟谷学園高校男子バレー部のエースに美沙が地味リボン呼ばわりされてしまうのは想定外だった。
次章へ続く