第28章 【リボンの話】
その後も散々考えて所持金とも相談した挙句、力は美沙に似合いそうと思った色のリボンを2色分買うことにした。レジに持って行くまでがこれまた気恥ずかしいが今更だ。店員にはすぐプレゼント用ですかと聞かれ、ためらいがちにはいと答えたらすぐ後ろに並んでいたカップルにクスクス笑われた気がした。きっと誰かにプレゼントするみたいな用事がある奴に見えないんだろうと力はぼんやり思う。もし義妹の美沙ならどうしただろうか。やはり知らんがなと顔を上げているだろうか。
支払いを済ませて包んでもらったものを受け取ってから力は花巻の姿を探す。花巻はハンカチの棚の辺りをウロウロしていたがやはりまともにプレゼントを考えている様子がない。
「花巻さん。」
「おー、そっち済んだのか。」
「はい。」
「んじゃ行くか。」
「え、あの、彼女さんに何か買うって。」
「もう買った。」
「え。」
そんな様子なかったけどと力は思い、そこでハッとする。
「何ボケっとしてんだよ、ほれ行くぞ。」
「ああ、はい。」
力は花巻に促され店を出た。
店を出てから2人はしばらく一緒に歩いていた。
「ままコは元気してるみたいだな。」
「ええ、おかげさまで。」
「及川が相変わらず美沙ちゃん美沙ちゃんうるせーからそうだとは思ってたけどよ。」
「あの人には困りますね、美沙のところにやたらメッセ送ってるみたいで。」
「俺はハンドルネームままコちゃんのファンだからいーのとか何とか訳わかんねーこと言ってたぞ。で、岩泉にしめられてた。」
力は様子が目に浮かぶようだと思わず微笑む。
「で、相変わらずあいつ何か描いてんの。」
「ええ。ルーズリーフの消費理由がおかしいレベルで。」
「意味わかんね。」
「絵の下書きに使っちゃってるんです。」
「よくやるわ。そんなガリガリやっててしんどくねーのかねぇ。」
「そのご意見もわかります。でも作るのも楽しいですよ。」
「ほー、兄貴はわかるのか。」
「ほんの少し。」
美沙とジャンルは違えど仲間を巻き込んでごくたまに実写で映像を撮っている力としてはまったくわからない話ではない。
「美沙がよく言ってるんですが、自分の世界が広がる感じが楽しいんですよね。」
「聞かないとわかんねえもんだな。」
花巻は呟いた。