第28章 【リボンの話】
「で、お前ままコに何買う訳。」
花巻が尋ねる。
「リボンを買ってやろうと思って。」
「おーおーブレスレットやるだけじゃ足りねえってか。」
「何であれを俺がやったってご存知なんです、また及川さんですか。」
「前会った時うちの矢巾と渡がままコからその話聞いたって。」
「あの馬鹿。」
「ど天然が妹だと大変だな。」
「というか俺ら兄妹そっちで何だと思われてるんでしょう。」
「とりあえず国見は夫婦予備軍だと思ってるみてぇだぞ。」
「ホント勘弁してくださいよ。」
力はため息をついた。影山と同じ中学だったという国見の察しの良さには参る。実はその後本当に自分と美沙が一線を越えたことを彼が知ったらなんと言うだろうか。しかし今はそれどころではない。
「うーん、これにしようかな。でもあいつならこっちも似合いそうだな。」
「お前ホントままコ好きなのな。」
「いけませんか、妹になった子を大事にして。」
「いけなくねーけどお前のはキテるわ。最初見た時も思ったけどよ。」
それは違いないと力は苦笑するしかない。
「自分でもびっくりです。どうも美沙が来てからこっち、自分の事でも思う以上に気づいてないんだなって事が多くて。」
「何だ、人生は勉強てか。お前いちいちそんな難しい事考えてんのか。」
「難しい、ですか。」
「難しいつーか面倒くせえわ。」
「性分ですかねぇ。」
力はまた苦笑してふと花巻がまだ自分の側にいることに気がついた。確か花巻は彼女へのプレゼントを見繕(みつくろ)うとかなんとか言っていなかったか。
「あの、花巻さん、俺の事はお構いなく。ご自分の用を優先してください。」
「おー。」
花巻は言って他の棚の方へ行く。しかしこそっと肩越しに様子を見ていた力は彼女が絡んだ用事の割にはあまり真剣に見ていないなと思った。