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【ハイキュー】エンノシタイモウト第二部

第28章 【リボンの話】


この時その場にいた男子排球部の他の奴らにたまたま一連の話が聞こえていなかったのは幸いだったかもしれない。もし月島あたりに聞こえていたら気は確かですかなどと言われていただろうし、2年仲間の成田と木下には縁下の上に教会を建てるか監獄を建てるかの瀬戸際だと言われていただろう。

清水の助言を得た力はその後の休日、練習が終わった後にとある店の前にいた。女子がいくような店である。入るのは当然ほとんどが女性、その中に如何にも練習帰り丸出しの汗臭い野郎が1人入ろうとしている。今更だが正直場違いなのがわかっていて恥ずかしい。力は店の前でしばし迷った。カップルでとはいえ野郎がいない訳でもないしと思いもしたが腰が引けてしまう。ここに来て情けなく迷ったままのところへ思わぬ助けがきた。

「お、お前烏野の6番。」
「あ。」

まさかの事態に力は一瞬ポカンとした間抜けな顔を晒してしまった。青葉城西の花巻である。

「は、花巻さん、ご無沙汰してます。」
「よお、久しー。及川から聞いてっけどホントかってえな、お前。」
「いやあの俺はこういう奴なので。」
「ま、そーだろーけどよ。」
「で、あの、花巻さんはどうされたんです。」

ふと気付いて力は呟く。そういえば花巻は今1人だ。

「おー、ちょいと彼女にプレゼントをと思ってよ。」
「花巻さんらしいですね。」
「そういうお前はどーなのよ。」
「俺もまぁ似たようなもんです。」

力は困惑しながら微笑む。

「何だ、お前も彼女か。」
「ええと。」
「あ、待てその反応。さてはままコだな。」

いつだったか一度美沙と遭遇したことのある花巻は以降勝手に美沙が動画投稿に使っているハンドルネームで呼んでいる。力はうぐっと唸るしかない。

「お前どんだけだよ、このシスコン。」
「ほ、ほっといてくださいっ。」

焦る力に対し、花巻はニヤリとした。

「まーそう怒んなって。丁度いいや、ほれ、はいろーぜ。」
「は、はい。」

あれよあれよと言う間に力は花巻のペースに乗せられ、一緒に店に入った。
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