第28章 【リボンの話】
大分前の話であるが先日音駒高校が烏野にやってきて練習試合をした時、撮影要員として連れてこられた縁下力の義妹、美沙はいつもつけているブレスレットの代わりに義兄からもらったリボンをつけていた。しかし縁下力が突如リボンを買ってきて義妹につけさせるまでに何があったのか。
それはこんな具合だった。
音駒との練習試合の話が決まった日で、部活が終わって部室で皆がゴソゴソしていた時である。
「清水先輩。」
「何、縁下。」
「うちの美沙なんですが」
「うん。」
「髪にリボンて似合うと思いますか。」
ここで清水を崇める田中と西谷が縁下(力)が潔子さんに話しかけやがったと案の定突撃しようとするが田中は木下に引きずられ、西谷は成田に要請された東峰にとっ捕まることで事無きを得た。
「どうして。」
「いや、その」
当の縁下力は後ろで起こっていたことにうっすら気付きながらもとりあえず聞こえなかったふりをする。
「あいつに今度の練習試合、撮影頼む事になったはいいんですがいつもみたいにブレスレットつけさせたままじゃちょっと危ないかなって。」
「そうかもね。」
「でもあいつあまりにも洒落っ気がないし、どうしようかなって。」
「それでリボン。」
「はい。」
「別につけさせなくてもいいんじゃない。」
「えとそれはそうなんですがその」
清水のもっともな指摘に力はしどろもどろになる。当然だ、本当の理由は別にあってそれは明らかに自分勝手なものであることをわかっているからだ。本当の理由は言うまでもない、ブレスレットをつけさせているのと同じように美沙は自分のだと印をつけておきたいから。
「美沙ちゃんにとったら知らない人がいっぱいくるから印象よくしてあげたいの。」
幸いなのか何なのか清水は大変好意的な解釈をし、力は内心ホッとしながらそれに乗っかった。
「そう、そうなんです。」
清水はそっかと呟き、
「そうねぇ、美沙ちゃんならリボン似合うんじゃない。」
「そうですか。やっぱり白ですかねぇ。」
「それもいいけど他のパステルカラーのがきっと似合う。」
「ありがとうございます。」